自殺を告げずに建物を賃貸したことを違法とした大阪高裁H26.9.18判決

 建物内で自殺、殺人等があった場合、賃貸借契約に際し、賃貸人は賃借人に対して、自殺等があったとを説明しなければなりません(説明義務)。自殺等があった建物で、自殺等の後に日常生活を営むことは嫌悪感を生じ、住み心地の悪さを感じるからです。

 上記の事例で、賃貸人に対して損害賠償を命じた大阪高裁平成26918日判決がありますのでご紹介します。

大阪高裁平成26918日判決

事案の概要

1 平成235月、Yは本件建物を競売により取得したところ、その頃、同建物内で居住者が自殺した。

2 平成248月、YXに対し、本件建物を賃貸し、入居した。契約の際、YXに対し、同建物で自殺があったことを説明しなかった。

3 自殺があったことを知ったXは契約を解除して本件建物から退去し、Yに対し損害賠償請求訴訟を提起した。

4 原審(神戸地方裁判所尼崎支部平成251028日判決)は、Yに対し、104万円の損害賠償を命じ、Yは控訴した。

高裁判決の内容

 高裁は次のように判示して原審を維持しました。

「①Yは、平成248月○○日、Xとの間で、本件賃貸借契約を締結した当時、本件建物内で1年数か月前に居住者が自殺したとの事実があることを知っていたこと、②Xは、本件建物に居住する目的で本件賃貸借契約を締結したものであり、③Yは、本件契約締結当時、上記②の事実を知っていたことが認められる。一般に、建物の賃貸借契約において、当該建物内で1年数か月前に居住者が自殺したとの事実があることは、当該建物を賃借してそこに居住することを実際上困難ならしめる可能性が高いものである。したがって、Yは、平成248月○○日、Xとの間で、本件賃貸借契約を締結するに当たって、本件建物内で1年数か月前に居住者が自殺したとの事実があることを知っていたのであるから、信義則上、Xに対し、上記事実を告知すべき義務があったというべきである。」

「(ア)Yは、平成248月○○日、Xとの間で、本件賃貸借契約を締結するに当たって、本件建物内で1年数か月前に居住者が自殺したとの事実があることを知っていたのであるから、信義則上、Xに対し、上記事実を告知すべき義務があったのに、上記義務に違反し、故意に上記事実をXに対して告知しなかったこと、(イ)Yが上記告知義務に違反して上記事実を告知しなかったことにより、Xは、上記事実があることを知らずに本件賃貸借契約を締結し、これに基づき、賃貸保証料、礼金、賃料等を支払うとともに、引越しをして本件建物に入居したことが認められ、上記は、故意によってXの権利又は法律上保護される利益を侵害したものとして、不法行為を構成するというべきである。」

コメント

 自殺等があった建物を賃貸する場合、貸主は借主に説明する義務があり、これを怠ると、上記裁判例のとおり、損害賠償義務が生じます。ただし、事件後、何時まで説明する義務があるのかについては、個別の判断となります。

 また、最初の賃借人退去後の次の賃借人については、説明義務を否定した裁判例もあるようです。

 いずれにしましても、事故物件を賃借する際には注意を要するところです。

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(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
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