使用貸借のトラブル

家族、親戚、知人など特別な人間関係のある人間に対しては、建物や土地を無償で貸すことも多々見受けられます。このように、無償で貸し借りすることを「使用貸借」と言います。

貸し手は、「タダで貸しているのだから、何時でも返してもらえる」と考えているかもしれませんが、民法では、使用貸借の終了時期が決められており、何時でも返してもらえるわけではありません。

使用貸借においては、無償であるが故の、特別な人間関係であるが故のトラブルがあります。

使用貸借の問題でお困りの方は当事務所にご相談いただければと思います。

使用貸借の法律関係

使用貸借については民法539条から600条で規定されています。

使用貸借

使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生じます(民法593条)。

貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができますが、書面による使用貸借についてはこの限りではありません(593条の2)。

借主による使用及び収益

借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならなりません(594条1項)。借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができません(同条2項)。借主が前2項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができます(同条3項)。

借用物の費用の負担

借主は、借用物の通常の必要費を負担します(595条1項)。通常の必要費以外の費用については、その価格の増加が現存する限り、借主は貸主に対して償還を請求することができます(同条2項)。

貸主の引渡義務等

貸主は、使用貸借の目的である物を、使用貸借の目的として特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定されます(596条による551条の準用)。

期間満了等による使用貸借の終了

  1. 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了します(597条1項)。
  2. 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する(同条2項)。
  3. 使用貸借は、借主の死亡によって終了する(同条3項)。

使用貸借の解除

  1. 貸主は、使用貸借の期間を定めなかった場合において、目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができます(598条1項)。
  2. 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる(同条2項)。
  3. 借主は、いつでも契約の解除をすることができます(同条3項)。

借主による収去等

  1. 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負います。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでありません(599条1項)。
  2. 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができます(同条2項)。
  3. 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負います。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでありません(同条3項)。

損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限

  1. 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(600条1項)。
  2. 前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は、完成しません(同条2項)。

契約で返還時期を定めなかった場合の返還

土地や建物についての使用貸借契約を締結した場合、貸主は、何時、土地の返還を請求することができるのでしょうか。

597条2項で「当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。」とされています。建物については使用目的にもよるでしょうが、一定期間の使用が前提となるでしょう。土地については、建物の敷地として使用することが目的であるのなら、相当長期間が想定されていることが通常でしょう。

改正前の民法597条2項の「使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき」について、最高裁平成11年2月25日判決は、「土地の使用貸借において、民法597条2項ただし書所定の使用収益をするのに足りるべき期間が経過したかどうかは、経過した年月、土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、土地使用の目的、方法、程度、貸主の土地使用を必要とする緊要度など双方の諸事情を比較衡量して判断すべきものである」、「前記長年月(約38年8ヶ月)の経過等の事情が認められる本件においては、借主には本件建物以外に居住するところがなく、また、貸主には本件土地を使用する必要等特別の事情が生じていないというだけでは使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定する事情としては不十分であるといわざるを得ない」として使用収益をするのに足りる期間の経過を否定した原審判決を破棄しているところです。

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