必要費・有益費・造作買取

必要費

必要費とは、目的物の修繕を行い、使用に適する状態にしておくための費用のことです。賃借人がこの費用を支出した場合、賃貸人は直ちにその費用を償還しなければなりません(民法608条1項)。

賃借人が必要費の償還請求権をあらかじめ放棄するとの特約は有効です。

有益費償還請求

賃借人が建物を改良するために支出した費用を有益費と言います。賃借人が有益費を支出することにつき、賃貸人の同意は不要です。賃借人の改良によって建物の価値が増加した場合、その増加価値を賃貸人に無償で取得させることは衡平ではなく、賃貸人は賃借人に、賃貸借終了時に償還しなければなりません(民法608条2項)。

賃借人が有益費の償還請求権をあらかじめ放棄するとの特約は有効です。

有益費償還請求の詳細

客観的にみて建物の価値を増加させるものであることが必要

客観的にみて建物の価値を増加させるものであることが必要であり、建物の価値が増加していないと有益費償還請求は否定されます。

東京地判平成24・6・29

「不動産である本件建物に従として付合した物について検討すると、この点に関する原告の被告に対する請求について、有益費償還請求の趣旨を含むものとしても、入居時の内装工事価格(取得価格)から減価償却分を控除した残がそのまま有益費として認められるものではないし、本件証拠によっても、有益費として、その価格の増加が現存していることを裏付ける証拠がないし、かえって、賃借人はスケルトン状態に戻して返還することが規定されていたから、内装、造作等を撤去しなければならないのであって、もともと有益費による価値の上昇が残存することを予定していたとはいえないというべきである。」

支払いの時期

有益費の支払時期は賃貸借終了の時であり、賃貸借契約が存続する間は支払う必要はありません。

償還金額

償還金額は賃借人が支出した金額または物の価値の現実の増加額のいずれか低い方となります。その選択権は賃貸人にあります。

造作買取請求

賃借人は、建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、もしくは、建物の賃貸人から買い受けた造作について、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができます(33条1項)。

造作につき賃貸人の同意がない場合には賃借人には造作買取請求権はありません。また、賃料不払による債務不履行解除の場合も造作買取請求権はありません。

旧借家法のもとでは、造作買取請求権を放棄する旨の特約は無効でしたが、現行の借地借家法のもとでは造作買取請求権の権利放棄特約は有効となりました。

造作買取請求の詳細

賃貸人の同意を得て付加したこと

買取りを請求することができず造作は、賃貸人の同意を得て付加したことを要します。

建物に付加したこと

造作とは、建物に付加された物件で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的に便益を与えるものです(最判昭和29・3・11民集8巻3号672頁)。

裁判例では、廊下のドアの仕切、台所や応接室等のガス設備、配電設備、水洗便所、シャワー設備(東京高判昭和31・3・22)、レストラン用店舗の調理台・レンジ・食器棚・空調・ボイラー・ダクト等設備一式(新潟地判昭和62・5・26)などがあります。

ただし、東京簡判平成22・1・25は、毀損せず容易に取り外しができる状態で取り付けられているエアコンは造作に当たらないと判示しています。

東京簡判平成22・1・25

「室内の壁面にコンセント、その隣に丸い取り外し可能なスリープが設置されており、エアコンを取り付けるときには室内機の裏側を補強板に取り付けるが、ビスで取り付けるだけであるから、何ら建物を毀損するということはないこと、また、これまでエアコンの件で買取請求されたケースは記録上もない」

「建物賃貸借において、賃貸人の同意を得て建物に附加した造作については、賃貸借終了時に賃貸人に対し、これを時価で買い取ることを請求できる(借地借家法33条)。ここにいう造作とは、建物に附加された物件で賃借人の所有に属しかつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいい、賃借人がその建物を特殊の目的に使用するため、特に附加した設備の如きを含まない(最高裁判所昭和29311日判決民集83672頁、最高裁判所昭和331014日判決民集12143078頁)。附加とは、建物の構成部分となったものでもなく、家具のように簡単に撤去できるものでもなく、その中間概念であり、賃借人の所有に属し、賃借人が収去することによって、そのものの利用価値が著しく減ずるものであると解される。

そうすると、本件エアコンは、上記認定事実によれば通常の家庭用エアコンであって、本件建物専用のものとして設えたものではなく汎用性のあるものであり、これを収去することによって、本件建物の利用価値が著しく減ずるものでもなく、また、取り外しについても比較的容易であるものと認められることから、本件建物に附加した造作と認めることは難しく、造作買取請求の対象とならないものとみるのが相当である。」

特殊な用途にのみ適するに過ぎないものは買取請求の対象とならない

最判昭和29・3・11は、「造作とは、建物に附加せられた物件で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるものを云い、賃借人がその建物を特殊の目的に使用するため、特に附加した設備の如きを含まないと解すべき」と判示しています。

したがって、店舗の内装設備であっても、ほかの営業者や他業種ではそのまま利用することができない物であれば、造作にはならないということになります。

東京地判平成5426日・判例時報148374

「借家法5条にいう造作とは、建物に付加された物件で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるもの、すなわち客観的にみて建物の一般的な使用価値を増加させるものをいうと解すべきである。したがって、建物に設備されたものでも、家具や什器等のように物理的、経済的に独立性を有するものは、借家法5条にいう造作とはいえないし、また、営業用店舗に見られるような賃借人の営業の内容に応じて施された内装、造作は、通常、他業種の営業にはそのまま利用できず、また、賃借人の個性や好みに左右されるところが大きいことから、特段の事情のない限り、賃貸目的物の一般的な使用価値を増加させるものとはいえないとみるのが相当である。」

買取代金は造作の時価

買取請求権の行使により賃貸人の支払うべき買取代金は、造作の時価であり、基準時は買取請求権行使の時です。

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
「広く、深く」をモットーに研鑽に努めています。インターネット上の法律情報を整理したサイト「法律情報 navi」を運営していますのでご覧ください。

弁護士 中村友彦(なかむらともひこ) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(2012.12 登録、日弁連登録番号:46674)
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