所有者不明土地の解消~概要

令和3年4月21日、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号、「相続土地国庫帰属法」)が成立しました(令和3年4月28日公布)。

両法律は、所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に民事基本法制の見直しを行うものです。

課題

相続登記がされないこと等により、所有者不明土地が発生しており、これを解消することが大きな課題となっています。

※ 所有者不明土地とは次の土地のことです。

  • 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
  • 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地

※ 平成29年の国土交通省の調査によりますと、所有者不明土地の割合22 %であり、その原因は相続登記の未了が66%、住所変更登記の未了が34%とのことです。

背景

所有者不明土地が発生する背景には次の事情があります。

  1. 相続登記の申請は義務ではなく、申請しなくても不利益を被ることは少ない。
  2. 都市部への人口移動や人口減少・高齢化の進展等により、地方を中心に、土地の所有意識が希薄化・土地を利用したいというニーズも低下した。
  3. 遺産分割をしないまま相続が繰り返されると、土地共有者がねずみ算式に増加する。

問題点

所有者不明土地の発生による問題点には次のものがあります。

  1. 所有者の探索に多大な時間と費用が必要となる(戸籍・住民票の収集、現地訪問等の負担が大きい)。
  2. 所有者の所在等が不明な場合には、土地が管理されず放置されることが多い。
  3. 共有者が多数の場合や一部所在不明の場合、土地の管理・利用のために必要な合意形成が困難である。

その結果、次のような状況が生じています。

  1. 公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引が阻害されるなど、土地の利活用を阻害している。
  2. 土地が管理不全化し、隣接する土地への悪影響が発生している。

このような状況は高齢化の進展による死亡者数の増加等により、今後ますます深刻化するおそれがあり、有者不明土地問題の解決は、喫緊の課題となっています。

改正法の概要

上記の課題を解消するため、「民法等の一部を改正する法律」(民法等一部改正法)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法)が成立しました。その概要は次のとおりです。

不動産登記制度の見直し

登記がされるようにするための不動産登記制度の見直しが行われました。

  • 相続登記・住所変更登記の申請義務化
  • 相続登記・住所変更登記の手続の簡素化・合理化

相続土地国庫帰属制度

土地を手放すための制度 (相続土地国庫帰属制度)が創設されました。これは、相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度です。

民法の規律の見直し

土地利用に関連する民法の規律の見直しが行われました。

  • 相隣関係の規定の見直し
  • 共有者が不明な場合の共有地の利用の円滑化
  • 所有者不明土地管理制度等の創設
  • 長期間経過後の遺産分割の見直し

施行日

施行期日は次のとおりです。

1 原則として公布(令和3年4月28日)後2年以内の政令で定める日

※ 相続登記の申請義務化は令和6年4月1日施行です。

2 登記がされるようにするための不動産登記制度の見直しのうち、

  • 相続登記の申請の義務化関係の改正については公布後3年以内の政令で定める日
  • 住所等変更登記の申請の義務化関係の改正については公布後5年以内の政令で定める日

参考サイト

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