休眠抵当権を末梢する方法
①相続で不動産の相続登記しようとしたら昔の抵当権が残っていた、②不動産を売却しようとして登記を見たら抵当権が付いていた、というように大昔の抵当権が抹消されないまま残っていることがあります。このような抵当権がついている不動産は、通常の場合、処分は困難です。売れたとしても、本来の価値よりも極めて低い価格になりがちです。抵当権が付いたままでは、抵当権を実行されて競売にかけられてしまう可能性があるからです。
本来抹消されるべき抵当権が付いたまま放置しておけば、放置しておくほど、後の処理が面倒になる可能性や、いざ売買等で必要にせまられた場合に時間がなくて困るということになりかねません。
以下では、抵当権を抹消する方法をご説明しますので参考にしてください。
1 抵当権者との交渉
抵当権者が金融機関であれば、ローンが完済となっているなど明らかに当該抵当権が無効となっているなら、通常、抵当権の抹消登記手続書類を渡してくれます。
金融機関でなくとも、抵当権が無効であることが明らかであるなら、登記だけ残っていても意味がありませんから、抵当権抹消登記手続に協力してくれることが多いと思われますので、交渉してみてはいかがでしょうか。
2 抵当権抹消登記手続請求訴訟
抵当権者が抹消登記手続に協力してくれればよいのですが、協力してくれなければ、抵当権抹消登記手続請求訴訟を起こさなければなりません。そして、勝訴判決に基づいて末梢登記を行うことになります。
訴訟で抵当権の登記を抹消しようとすると最低数か月はかかります。余裕があるうちに、迅速に処理すべきです。
3 不動産登記法による休眠抵当権の抹消
休眠抵当権抹消の制度
抵当権の抹消は、共同申請が原則であり(不動産登記法60条)、抵当権者と抵当権設定者とが協力して行う必要があります。しかし、協力が実際上期待できない場合には、例外として登記権利者が単独で登記申請することがあります。
不動産登記法70条3項で規定されている休眠抵当権の抹消がその一つです。
要件
- 抵当権者等の登記義務者が行方不明であり、共同で抵当権等の登記の抹消を申請することができないこと。
- 被担保債権の弁済期から20年以上経過していること。
- 被担保債権の債務者、物上保証人等が、債務履行地の供託所に、被担保債権(元本)、利息及び債務不履行によって生じた損害金を供託すること。※70条3項前段による場合は、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものの提供となります。
- 供託したことを証する書面(供託書正本)を登記申請書に添付して、単独で抵当権等の登記の抹消を申請すること。
関連条文
(登記義務者の所在が知れない場合の登記の抹消)
不動産登記法70条
- 登記権利者は、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第99条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
- 前項の場合において、非訟事件手続法第106条第1項に規定する除権決定があったときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で前項の登記の抹消を申請することができる。
- 第1項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。
参考サイト
抵当権の抹消でお困りの方は、一度、当事務所にご相談いただければと思います。
(弁護士 井上元)
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