抵当権実行~「担保不動産収益執行」もあります!

 貸付金などの債権者が、債務者や保証人所有の不動産に抵当権設定を受けている場合、返済が滞ると、当該担保不動産を競売にかけ、売却代金から債権の回収を図るというのが通常です。

 しかし、抵当権実行の制度として、抵当権者が抵当不動産の収益から優先弁済を受けることができる担保不動産収益執行という手続もあります。あまりなじみのない制度と思われますのでご紹介しましょう。

担保不動産収益執行とは?

 担保不動産収益執行とは、抵当不動産から生じる賃料等の収益を抵当権の被担保債権に対する優先弁済に充てることを目的として、平成15年改正によって新設された制度です(民事執行法180条2号)。

 抵当不動産及び収益(給付請求権)を差し押さえた上、執行裁判所が選任する管理人において収益を収取し、これを収益執行を申し立てた抵当権者その他の配当受領権者に配当する手続です。

類似の手続

抵当権の物上代位効に基づく賃料の差押え

 最高裁平成元年10月27日判決は、抵当権者による抵当不動産の賃料に対する物上代位による抵当権の行使を認めました。具体的には、賃借人に対する賃料請求権を差し押さえて、賃借人から直接賃料の支払ってもらうことができます(民法372条、304条、民事執行法193条)。

強制管理

 強制管理とは、債務者から不動産の所有権を奪うことなく、その不動産の収益力に着目し、目的物件について債務者の管理・処分権を拘束し、目的物から生ずる果実の収益を徴収してこれを債権者の金銭債権の満足に充てることを目的とする執行方法です。

 担保不動産収益執行とほぼ同様の手続きですが、強制管理は担保権を有していない債権者でも利用できる手続です(ただし、執行力のある債務名義を有していることが必要です)。

収益執行のメリット

大規模の賃貸マンションやテナントビルに適する

 物上代位による賃料差押えでは、管理人を選任しないため手続費用が低額であり、差押債権者に直接の取立権が与えられるなど、簡易・迅速な債権回収が可能となります。賃借人の数が少なく賃料収取が簡便な小規模の不動産に適します。

 これに対し、収益執行では、多数の賃借人がいる不動産でも不動産単位で手続を行うことができ、賃借人を特定して個別に賃料債権を差し押さえる必要はありません。また、管理人が管理収益から不動産の維持管理費用を支出することができ、不法占有者を排除し、あるいは賃料不払・用法違反を理由として賃貸借契約を解除し、新規の賃貸借の締結にあたることができるなどの利点があります。一方、コストが高くつくというデメリットがあります。したがって、大規模の賃貸マンションやテナントビルなどの不動産に適します。

抵当不動産の価値を維持できる

 賃貸マンション等の収益物件については、競売により売却されたとしても、事前に収益執行手続を経ていれば、抵当不動産につき管理人による保守管理が行われるとともに、賃料滞納者の排除、新規賃借人の募集等の管理業務を通じて安定的な収益が確保され、結果として抵当不動産の価値を維持することができます。

 実際に、抵当権者が収益執行と同時並行的に不動産競売を申し立て、競売による売却によって収益執行が終了するものが多くみられる模様です。

参考文献等

 担保不動産収益執行については「担保不動産収益執行の諸問題」(判例タイムズ1319号5頁以下)で詳しく解説されていますので、実際に利用を検討される場合にはこれを参照してください。

 手続の概要については、裁判所サイト≫民事執行手続に掲載されています。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
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