保証会社による支払いと賃料不払解除
建物賃貸借契約に際して、賃借人の保証人となる保証会社が登場し、近時、多くの利用があるようです。
賃借人に賃料不払がある場合、保証会社が賃借人に代わって賃料を支払うことになりますが、保証会社が支払った場合、賃料不払いは解消されて賃貸人による契約解除はできなくなるのか、あるいは、この場合でも契約解除が可能であるのか、争いとなった事案がありますのでご紹介します。。
大阪高裁平成25年11月22日判決
事案の概要
① 貸主X1は借主Yに対し建物を賃貸し、同時に、保証会社X2は借主Yとの間で月額賃等の12ヶ月分(訴訟が提起された場合は、訴訟提起時の滞納額に加え、月額賃料等の10ヶ月分相当額)を上限として支払う旨の賃貸借契約を締結した。
② 借主Yの賃料不払いのため。貸主Xは賃貸借契約を解除し、建物明渡しを求める訴訟を提起した。
③ 保証会社X2はYの不払賃料5ヶ月分を貸主X1に対し代位弁済した。
④ 保証会社X2は、貸主Yに対し代位弁済した5ヶ月分の賃料39万円と保証事務手数料5000円の支払いを求める訴訟を提起した。
⑤ 借主Yは、保証会社X2による代位弁済があることから、賃料等の滞納はないと主張した。
判決内容
判決は、次のように判示して貸主X1による解除を認めました。
「本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は、保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し、賃借人が賃料の支払を怠った場合に、保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり、これにより、賃貸人にとっては安定確実な貨料収受を可能とし、賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。しかし、賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって、賃借人による賃料の支払ではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく、ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。」
Yが最高裁に上告しましたが、最高裁平成26年6月26日判決は上告を受理しませんでした。
コメント
上記事件では、上記のとおり判示して契約解除を認めたものですが、賃借人は保証会社に対して5ヶ月分の立替金を支払っておらず、契約解除を認めた結論としては相当なものだと言えるでしょう。
しかし、賃借人は保証会社への返済の後、速やかに立替分を支払ったような事案では、同様の考え方により契約解除が認められるかは不明です。今後の裁判例の展開を注視する必要がありそうです。
(弁護士 井上元)