下階の歌声が受任限度を超えるとした東京地判平成26・3・25

 居住する不動産について近隣の騒音に関する紛争がよく生じることですが、マンションの下階の歌声が受任限度を超えるとした東京地裁平成26325日判決をご紹介します。

事案の概要

 Xらはマンションの8階に居住していたところ、7階に居住するロックミージシャンYの歌声は受任限度を超えるとして、①Yに対する騒音差止め、②下階マンションの所有者に対する損害賠償請求、③Yに対する損害賠償請求を行った。

判決内容

 ①、②については棄却し、③Yに対する損害賠償請求については、次のように判示して慰謝料計30万円及び弁護士費用6万円を認容しました。

「環境条例(注:都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)136条は、何人も別表第13に掲げる規制基準を超える騒音、振動を発生させてはならないと定めている。この基準の適用については、その騒音等の測定場所が、音源の存する敷地と隣地との境界線とされているため、本件のように音源と測定場所が上下関係にある場合にはこの基準によることは直接想定されていないということができるが、環境条例が、現在及び将来の都民の健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保することを目的として定められている(1条)ものであることに照らせば、上記規制基準は、本件のような場合にも騒音等が受忍限度を超えるかどうかの判断につき、一つの参考数値として考慮するのが相当である。

 そして、・・・・・の測定結果によれば、8△▽号室に伝播するYの歌声の騒音レベルは、最大41デシベル程度であったものと認められ、これは、環境条例の規制基準(商業地域)において、午前6時から午前8時までは55デシベル、午前8時から午後8時までは60デシベル、午後8時から午後11時までは55デシベル、午後11時から翌日午前6時までは50デシベルと定めているところを超えるものではない。

また、本件検証の結果によれば、Yの歌声は、少なくとも深夜(午後11時から翌日午前6時まで)以外の時間帯においては、通常人において特段不快に感じるようなものであるとは認められない。

 もっとも、深夜における騒音については、本件マンションが商業地域内にあることはあまり重視すべきではないと考えられるところ、被告一郎の歌声は、生活音とは明らかに異質な音であり、その音量が最大41デシベルにとどまるとしても、入眠が妨げられるなどの生活上の支障を生じさせるものであるといえる。また、環境条例における深夜の規制基準は50デシベルであるが、建物の防音効果を考慮すると、建物内においてはより厳格な数値が求められているものである。これらの点を考慮すると、最大41デシベルに及ぶ深夜における被告一郎の歌声は、受忍限度を超えるものであるというべきである。」

「以上によれば、被告一郎は、平成14年4月ないし5月に7××号室に入居して以降、年に数回程度、深夜に歌を歌い、8△△号室に受忍限度を超える騒音を伝播させたものであると認められ、その限りで不法行為責任を負うべきものである。」

コメント

 マンションにおける騒音紛争についてはよく起こりがちなことであり、本件では、東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」に定められた基準を参考に、実際の騒音については専門業者による測定結果を基準として判断されています。紛争解決のためには、このように客観的な数値を調査することが必要です。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
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