建物明渡し執行における目的外動産の処理
借主の賃料不払いなどを理由として賃貸借契約を解除し、建物明渡し訴訟を提起して勝訴判決を得て建物明渡しの強制執行を行った場合、建物内の存する家財道具はどうなるのでしょうか?
これが目的外動産の問題です。目的外というのは、執行の目的は建物であり、建物内に存する家財道具は強制執行の対象ではないという意味で「目的外」となるのです。
この目的外動産の処理は民事執行法168条(不動産の引渡しの強制執行)および民事執行規則第154条の2(強制執行の目的物でない動産の売却の手続等)により次のように処理されることになります。
1 債務者らへの引渡し(民事執行法168条5項前段)
債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡すのが原則です。
2 断行実施日に売却(民事執行法168条5項前段、民事執行規則第154条の2第2項)
1の引渡しができない場合。執行官は、明渡しの催告をする際に、当該建物内にある目的外動産の概要を把握し、断行実施日に売却するに適しているかどうかを判断し、適していると判断した場合、断行実施予定日に売却する旨の決定をして公告します。
3 断行実施日における即日売却(民事執行規則第154条の2第3項)
明渡し催告の際には、断行実施予定日における目的外動産の売却は決定しなかったが、断行実施日に、目的外動産を、その日にその場で売却をするのが適当であると執行官が認めた場合には、公告を要せず即時売却することができます。
ただし、高価な動産については即時売却することはできず、後記5の方法によることになります。
4 断行実施日から1週間未満の日を売却期日とする売却(民事執行規則第154条の2第3項)
断行実施日における目的外動産の残置状態等から、債務者等による引取りも見込まれず、しかし、即日売却の条件は整っておらず(買受申出人不在)、かといって目的外動産を他所にある倉庫まで梱包、搬出、運搬して一定期間保管のうえ、売却するほどのものでもないと認められる場合などに利用されます。
5 動産執行の例による売却(民事執行規則第154条の2第1項、4項)
上記1~4の方法による売却でできない場合には、動産執行手続きにおける売却の例によって売却されます。
具体的には、執行官保管としたうえで、やむを得ない事由がある場合を除いて保管の日から1週間以上1月以内の日を売却期日として指定し、売却の公告等とし、その間に、評価人を選任し、その動産を評価させなければなりません(民事執行規則114条1項後段、115条、111条1項)。
(弁護士 井上元)