登記引取請求は認められるか?

登記引取請求とは何か?

 ある不動産が自分Xの登記名義になっているが、実際は、Yの所有である場合、その登記は真実に合致していません。このような場合、XはYに対して、当該不動産の登記名義をY名義に引き取ることを請求できるのでしょうか?

 固定資産税等は登記名義人に課されるため、Xとしては、これを免れるためには、Y名義にしてもらわなければなりません。

登記引取請求権を認めた最高裁昭和36年11月24日判決

 この点、最高裁判所昭和36年11月24日判決は、次のように述べて登記引取請求権を認めました。

「真実の権利関係に合致しない登記があるときは、その登記の当事者の一方は他の当事者に対し、いずれも登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権を有するとともに、他の当事者は右登記請求に応じて登記を真実に合致せしめることに協力する義務を負うものというべきである。本件において、被上告人は上告人からその所有にかかる本件宅地を買い受けその旨の所有権取得登記を経由したが、上告人において売買契約の条件を履行しないためこれを解除したことを理由として、右登記の抹消登記手続を求めるものであるから、上告人は之に対応して右抹消の登記に協力する義務ある旨の原審の判断は、前判示に照して正当である。」

登記引取請求を認めた最近の下級審判決

 登記引取請求権に関する裁判例は多くありませんが、最近の下級審裁判例で幾つか認めているものがありますのでご紹介します。

 尚、参考のため、登記請求に関する主文を若干修正のうえ掲げます。

①東京地方裁判所平成26年11月11日判決

 土地共有者が死亡した後、相続人及び特別縁故者の不存在が確定し、民法255条により共有者が取得した持分について持分移転登記手続が行われなかったため、相続財産管理人が持分を取得した共有者に対して、登記引取請求を行いました。

(主文)

「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載1及び2の各土地につき、平成25816日特別縁故者不存在確定を原因とする原告から被告への原告持分全部移転登記手続をせよ。」

(判決理由)

「原告は本件土地の共有持分を有していないにもかかわらず、本件土地の不動産登記記録には、本件持分を有している旨が公示され、原告から被告への本件持分の移転が反映されておらず、現在の実体的権利関係に符合していないのであるから、原告は、被告に対し、不動産登記記録に公示された権利関係を現在の実体的権利関係に符合させるべく、被告に対し本件持分の全部移転登記手続を求める登記請求権を有するものと解するのが相当である。したがって、原告は、被告に対し、上記登記請求権に基づき、平成25年8月16日特別縁故者不存在を原因とする原告から被告への原告持分全部移転登記手続を求めることができる。」

②東京地方裁判所平成20年9月24日判決

 土地売買契約の買主が、売主との間の売買契約を瑕疵担保を理由として解除するとともに、売買契約の解除による原状回復に基づき、買主名義となっている所有権移転登記の引取り及び売買代金相当額の支払を請求したところ、これが認められました。

(主文)

「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地について、原告を登記義務者、被告を登記権利者とする真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をせよ。」

③東京地方裁判所平成19年6月20日判決

 不動産の売主が、買主に対し、所有権移転登記手続を求めたところ、これが認められました。

(主文)

「被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の土地につき,平成14614日売買を原因とする原告から被告への地上権持分●●●分の●●の1番地上権原告持分一部移転登記手続をせよ。」

④東京地方裁判所平成12年8月31日判決

 土地の売主が買主に対し、所有権移転登記手続を求め、被告は、登記引取請求権は時効により消滅したと争ったところ、判決は、登記引取請求権は消滅時効にかからないとしました。

(主文)

「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地につき昭和521222日付け売買を原因とする原告から被告への所有権移転登記手続をせよ。」

(判決理由)

「不動産の売買により所有権が移転した場合には、売主は、買主に対し、当該不動産について所有権移転登記手続を求める登記請求権がある。この請求権は、登記を実体上の所有関係と一致させるために認められるものである。売主は、不動産を売却したことにより、当該不動産の所有権を失うから、この登記請求権は、所有権に基づくものではないが、売主が所有権を失い買主が所有権を取得したことを登記に反映させるための請求権であるから、物権に準じて、消滅時効にはかからないものと解するのが相当である。この登記請求権が時効により消滅するとすれば、売主は、買主の任意の協力がない限り、実体上の所有関係と登記とを一致させる法的手段がないことになり、不合理であることは明らかである。」

コメント

 売買について債務不履行や瑕疵の存在などにより売買の効力自体に争いがあったり、当該不動産に価値がないため真実の所有者が登記を引き取らないようなケースがありますが、このような場合、登記引取請求訴訟を提起し、勝訴判決により登記を引き取らせることが可能です。お困りの方はご検討ください。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

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