無断増改築による解除を否定した東京地裁平成25年5月14日判決

無断増改築の禁止の原則

 建物賃貸借において、賃借人は賃貸人に無断で増改築を行ってはなりません。賃貸人の所有物ですから当然のことであり、また、賃貸借契約では、通常、無断増改築は禁止されているものと思われます。

 しかし、無断増改築による解除についても、信頼関係不破壊の法理が適用され、増改築の程度によっては解除できないこともあります。

 無断増改築を理由とする解除を肯定した裁判例、否定した裁判例も多々存するとことですが、これを否定した東京地裁平成25年5月14日判決を紹介しましょう。

東京地裁平成25年5月14日判決

 原告らは、本件工事は本件無断増改築禁止特約で禁止された「増築、改築又は新築」に当たると主張するところ、建物の増改築とは、一般的に、増築(床面積の増加、附属建物の新築)ないし改築(既存建物の全部又は一部を取り壊して新たに建物を建て直す(建替え)こと)をいうが、本件無断増改築禁止特約が合意された目的が、増改築工事により本件建物の耐用年数が大幅に延長され、借地権の存続期間に影響を及ぼすことを避ける点にあると解されることからすると、本件無断増改築禁止特約における「増築、改築又は新築」も上記と同様の意義を有するものと解される。

 そこで検討すると、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、本件工事(代金は630万円)によって本件建物の床面積は増加されていないこと、本件建物は、木造2階建の建物であり、新築時から1階部分は被告家族の居宅部分として、2階部分の3室は賃貸用アパートとしてそれぞれ使用されてきたものであること、平成23年4月当時、本件建物の耐震診断を行った結果は、1階部分及び2階部分のいずれについてもその構造耐震指標値が0.7未満で、地震により倒壊する可能性が高いと判定されていたこと、本件工事のうち耐震補強工事については、木造住宅において行われる一般的な補強工事の範囲にとどまり、建物の柱や土台を新設したり、移動させたりするものではないこと、また、その他の本件工事の内容も、2階部分の間取りを変更して2室にユニットバスを設置し、うち1室については6畳間の畳をフローリングと交換し、3室それぞれにインターホンを設置し、建物外部の手すり工事や外壁の一部の補修等をしたものにすぎないとの事実がそれぞれ認められる。

 以上によれば、本件工事によって本件建物の床面積は増加しておらず、本件工事が建物の増築に当たるということはできないし、上記で認められた本件工事の規模やその内容、本件建物の利用状況や本件工事以前における本件建物の耐震性の程度等に照らすと、本件工事は本件建物の保存や維持管理に対して必要限度内の工事にとどまるというべきであり、本件工事により、本件無断増改築禁止特約の趣旨に反して本件建物の耐用年数が大幅に延長されたということもできないから、本件工事が本件無断増改築禁止特約で禁止された「増築、改築又は新築」に当たるとの原告らの上記主張を採用することはできない。

コメント

 解除の可否にかかわらず、無断増改築が行われると紛争が生じてしまいます。賃貸人としては、建物の状況を常に確認することが重要ですし、賃借人としても、建物に手を加える際には必ず賃貸人の了解を得ることが重要です。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
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弁護士 中村友彦(なかむらともひこ) OSAKA ベーシック法律事務所

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