連帯保証人に対する滞納家賃の請求の一部が権利濫用であるとした東京高裁平成25年4月24日判決

保証人の責任

 貸主は、賃貸借契約を締結するに際し、保証人を求めることが多いと思われます。保証人は、賃料、原状回復義務など賃料以外の賃貸借に基づく債務、利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべての債務につき責任を負うことになります。

 ただし、明渡しについては、保証人自身は占有していませんので、その義務を負わないとされています。

保証人の責任の限定

 保証人は、原則として、未払賃料については、全額、責任を負いますが、信義則ないし権利濫用法理によりその責任が制限されることがあります。

 東京高裁平成25年4月24日判決(判例タイムズ1412号142頁)が保証人の責任を一部制限していますのでご紹介します。

事案の概要

 大田区は、平成12年9月、区営住宅をAに賃貸し、その娘が連帯保証人となった。平成14年、息子がAと同居し、平成18年2月、Aが退去したものの、息子は居住し続けた。

 大田区は、平成18年3月以降の家賃滞納を理由に、平成22年10月、賃貸借契約を解除し、平成23年8月、連帯保証人に対して滞納家賃635万円を請求した後、訴訟を提起した。

 判決は、「賃貸人の保証人に対する請求は一定の場合には信義則により制限されることがある(最高裁平成9年11月13日第一小法廷判決・裁判集民事186号105頁参照)」として、平成21年4月以降分についての請求は信義則に反し、権利の濫用として許されないとしました。

 尚、原審の東京地裁平成24年7月18日判決は、次のように判示しているところです。

「我が国の法令上、債権者の損害軽減義務ないし損害拡大防止義務を正面から定めた規定は、国際物品売買契約に関する国際連合条約(平成20年条約第8号。同条約には国内法的効力がある。)77条以外には見当たらない。また、建物賃貸借契約において、賃借人の賃料不払によって賃貸人に解除権が発生した場合に、賃貸人に当該解除権の行使を義務付ける規定が存在しないことは、原告主張のとおりである。しかしながら、建物賃貸借契約における賃借人の保証人は、未払賃料や賃料相当損害金等を賃借人に代わって支払う債務を負担するものであるところ、賃借人が賃料不払を続けながら賃貸建物を明け渡さない場合、当該保証人には、当該賃借人に代わって賃貸建物を明け渡す法的権能も、当該賃借人をして賃貸建物の明渡しをさせる法的権能もないため、当該保証人の上記支払債務が無制限に拡大し得ることは、被告松子主張のとおりであって、同じく保証人であっても、売買契約の買主の保証人や金銭消費貸借契約の借主の保証人が、当該売買代金又は当該貸付金を主たる債務者に代わって完済すれば、それ以上に支払債務が拡大することがないのと根本的に異なる点である。したがって、賃借人が賃料不払を続けながら賃貸建物を明け渡さないという事態が生じた場合、賃貸人には、保証契約の当事者として、保証人の上記支払債務が当該保証契約に即して通常想定されるよりも著しく拡大する事態が生ずることを防止するため、当該保証人との関係で、解除権等の賃貸人としての権利を当該賃貸借の状況に応じて的確に行使すべき信義則上の義務を負うというべきであり、当該賃貸人が当該権利の行使を著しく遅滞したときは、著しい遅滞状態となった時点以降の賃料ないし賃料相当損害金の当該保証人に対する請求は、信義則に反し、権利の濫用として許されないというべきである。よって、連帯保証した債務につき時効が成立していない以上、賃貸人が徒に賃借人に債務承認を繰り返させ、時効期間を延ばしたような場合でない限り、連帯保証人に対する請求が権利濫用等になることはないとの原告の主張を採用することはできない。もっとも、賃貸人に解除権が発生した場合であっても、主たる債務者に未払賃料の支払の意思と能力があるときもあり、また、そうでないときでも、賃貸人の中には、話合いによる賃貸建物の任意の明渡しを受けるように努め、訴訟提起に至ることはできる限り避けたいと考える者も多いことや、訴訟提起を決断した後、賃借人等に対して賃貸建物の明渡しを求める訴えを実際に提起して、勝訴判決を得て、当該賃貸建物の現実の明渡しを受けるまでにも事案に応じて相当の時間がかかることなどに照らすと、上記の信義則違反があったと認めるためには、当該事案に照らし、これらの諸事情を考慮してもなお、保証人との関係において、賃貸人による解除権等の行使に著しい遅滞があると評価されることを要するというべきである。」

コメント

 本件は、平成18年3月から家賃滞納が発生した後、平成23年8月、連帯保証人に対して滞納家賃635万円を請求した後、訴訟を提起したものですが、平成21年4月以降分についての請求は信義則に反し、権利の濫用として許されないとしています。

 貸主としては、連帯保証人がいるからと安心することなく、家賃が滞納すれば、速やかに、借主との契約を解除し、連帯保証人に保証債務の履行を求めるべきでしょう。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
「広く、深く」をモットーに研鑽に努めています。インターネット上の法律情報を整理したサイト「法律情報 navi」を運営していますのでご覧ください。

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