違法設置エレベーターが賃貸人の義務違反とした東京地裁平成25年8月19日判決

賃貸人の義務

 賃貸人は賃借人に対し契約と目的物の性質により定まった使用方法に従って目的物を使用させる義務を負っています。

 この義務につき、ビルに設置されたエレベーターが建築確認を得ていない違法なものであった場合、賃貸人の債務不履行に該当するか否かが争われた東京地裁平成25年8月19日判決の事例がありますのでご紹介しましょう。

東京地裁平成25年8月19日判決

事案の概要

 原告は、転貸(サブリース)目的でビルを賃借したところ、当該ビルに設置されたエレベーターが建築確認を受けておらず使用できないものであったことを理由に賃貸借契約を解除し、賃貸人に対し、損害賠償金9481万円の損害賠償などを求めたものです。

 判決によると、本件ビルについて建築確認が得られておらず、検査済証も発行されていないこと、本件エレベーターについても建築確認が得られていない違法設置エレベーターであること、違法設置エレベーターについては国土交通省からの通知があり、本件エレベーターを撤去したり、新たにエレベーターを設置し直して、建築確認の申請を行ったりするなどの対応が必要であり、このまま本件エレベーターの使用を続ければ撤去命令が出る場合があること等の指摘を受けたとのことです。

 そして、国土交通省の上記通知は、建築基準法の規定に基づく確認・検査を受けずに設置されたエレベーターで重大な人身事故が発生したことを受け、平成22年1月27日付けで、「違法に設置されているエレベーター対策について」と題して、各都道府県建築主務部長宛てに発出されたものであり、特定行政庁において、違法設置エレベーターの所在その他につき情報把握に努め、立入検査等を行って建築基準法の適合状況について確認し、基準に適合しない場合には是正を指導するとともに、安全が確保されるまで当該エレベーターの使用を確実に停止させるなど、所要の措置を講じることを周知するよう求める内容のものであったとされています。

被告の損害賠償義務

 判決は、「賃貸借契約にあっては、特約のない限り、貸主が契約目的に沿って使用できる状態にして目的物を引き渡し、その状態を維持すべき義務があるところ、本件建物は6階建てであり、本件賃貸借契約の目的が事務所等の用途により転貸することにあることを前提とする限り、エレベーターの使用は必須であり、貸主である被告は本件エレベーターを使用可能な状態にして引き渡し、その状態を維持すべき義務を負っているということができる。そして、江東区の指摘内容によれば、本件エレベーターはそのままでは使用を継続するのが困難な状態にあり、被告から本件エレベーターを使用可能な状態にするべく具体的な措置を講じた旨の主張立証もないから、被告はこの点について債務不履行責任を免れないというべきである。」として貸主である被告の損害賠償義務を認めました。

損害

 また、原告の主張する賃料収入に係る逸失利益の算定根拠につき詳細に分析し、「賃料収入に係る逸失利益については、十分な損害の立証に足りないというべきである。」としました。

過失相殺

 ただし、「原告は、本件ビルが建築確認を得ていないことを承知して、本件賃貸借契約に及んだものであり、国土交通省の違法設置エレベーターに係る通知が公にされていること、建物に係る建築確認とそこに設置されているエレベーターに係る建築確認の関係を十分に調査していれば、本件エレベーターの使用に支障が生ずるおそれがあることは認識可能であったと考えられる。さらに、原告は、サブリースを主たる業務としており、宅地建物取引主任者を擁するなど、建築法令その他、相応の専門知識を備えていてしかるべきことからすれば、本件エレベーターの使用について制約を受ける可能性があることを看過して本件賃貸借契約を締結したことに関し、原告にも一定の落ち度があることは否定できない。」として原告には2割の過失があるとして過失相殺を認めました。

 その結果、債務不履行に基づく損害としては僅か43万円余りしか認めませんでした。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
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