過去に自殺・他殺があった物件の売買・賃貸借

土地・建物の売買の場合

 売買の目的物である建物において、過去、自殺や他殺があった場合、当該建物には心理的欠陥があるとして瑕疵があるとされています。

 例えば、横浜地裁平成元年9月7日判決は、「売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであって、右目的物が建物である場合、建物として通常有すべき設備を有しない等の物理物欠陥としての瑕疵のほか、建物は、継続的に生活する場であるから、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に原因する心理的欠陥も瑕疵と解することができる。ところで、売買における売主の瑕疵担保責任は、売買が有償契約であることを根拠として、物の交換価値ないし利用価値の対価として支払われる代金額との等価性を維持し、当事者間の衡平をはかることにあるから、右制度の趣旨からみると、前記事由をもって解除をしうる瑕疵であるというためには、単に買主において右事由の存する建物の居住を好まないだけでは足らず、それが通常一般人において、買主の立場におかれた場合、右事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感ずることに合理性があると判断される程度にいたったものであることを必要とすると解すべきである。右の観点からみると、原告らは、小学生の子供2名との4人家族で、永続的な居住の用に供するために本件建物を購入したものであって、右の場合、本件建物に買受の6年前に縊首自殺があり、しかも、その後もその家族が居住しているものであり、本件建物を、他のこれらの類歴のない建物と同様に買い受けるということは通常考えられないことであり、右居住目的からみて、通常人においては、右自殺の事情を知ったうえで買い受けたのであればともかく、子供も含めた家族で永続的な居住の用に供することははなはだ妥当性を欠くことは明らかであり、また、右は、損害賠償をすれば、まかなえるというものでもないということができる。」とし、買主による解除を認めるとともに、損害賠償請求をも認めています。

 また、大阪高裁平成18年12月19日判決は、土地の売買について、土地上にかつて存在した建物内で殺人事件があったことが隠れた瑕疵に当たるとし、買主による売主に対する損害賠償請求を認めています。

建物賃貸借の場合

 建物賃貸借の場合でも、建物において自殺・他殺があったことは心理的欠陥として、賃借人による解除や損害賠償請求が認められることになります。建物賃貸借の場合、賃貸人による説明義務違反として争われる場合が多いようです。

 この説明義務は、概ね、自殺が発生した次の新規入居者に対して認められ、その次の入居者に対しては認められていないようです。また、貸室以外での自殺等の場合や時間の経過により説明義務がなくなるものとされています。

取引の際における売主や賃貸人の注意点

 所有する土地や建物において自殺・他殺事故が発生すると、売買や賃貸に大きな障害が発生しますので、不動産オーナーとしては、そのような事情を隠して取引したいと考えるのは当然ですが、結局、事後に発覚した場合にトラブルが生じかねません。

 事故の態様や周囲の状況、取引の相手方等の事情にも鑑みて、一定期間、取引の相手方に説明を要するものと思われます。

(弁護士 井上元)

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
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弁護士 中村友彦(なかむらともひこ) OSAKA ベーシック法律事務所

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