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農地もしくは農地賃借権を時効取得できるか?

農地もしくは農地賃借権の取得時効が争われることがあります。
この点、最高裁判例では、いずれも時効取得の適用を認めておりますのでご紹介します。

農地の時効取得に関する最高裁判例

許可の要否

最高裁昭和50年9月25日判決

農地法3条による都道府県知事等の許可の対象となるのは、農地等につき新たに所有権を移転し、又は使用収益を目的とする権利を設定若しくは移転する行為にかぎられ、時効による所有権の取得は、いわゆる原始取得であつて、新たに所有権を移転する行為ではないから、右許可を受けなければならない行為にあたらないものと解すべきである。

自主占有

最高裁昭和52年3月3日判決

農地を賃借していた者が所有者から右農地を買い受けその代金を支払つたときは、当時施行の農地調整法4条によつて農地の所有権移転の効力発生要件とされていた都道府県知事の許可又は市町村農地委員会の承認を得るための手続がとられていなかつたとしても、買主は、特段の事情のない限り、売買契約を締結し代金を支払つた時に民法185条にいう新権原により所有の意思をもつて右農地の占有を始めたものというべきである。

最高裁平成13年10月26日判決

農地を農地以外のものにするために買い受けた者は、農地法5条所定の許可を得るための手続が執られなかったとしても、特段の事情のない限り、代金を支払い当該農地の引渡しを受けた時に、所有の意思をもって同農地の占有を始めたものと解するのが相当である。

過失の有無

最高裁昭和59年5月25日判決

被上告人が本件贈与に基づき○○の土地の占有を開始した昭和23年7月当時においては、農地の所有権を移転するためには、農地調整法(但し昭和24年法律第215号による改正前のもの)4条1項及び3項、同法施行令(但し同年政令第224号による改正前のもの)2条の各規定に従い、都道府県知事の許可(以下「知事の許可」という。)を受けることが必要であり、右移転を目的とする法律行為は、これにつき知事の許可がない限り、その効力を生じないとされていたのである。したがつて、農地の譲渡を受けた者は、通常の注意義務を尽すときには、譲渡を目的とする法律行為をしても、これにつき知事の許可がない限り、当該農地の所有権を取得することができないことを知りえたものというべきであるから、譲渡についてされた知事の許可に瑕疵があつて無効であるが右瑕疵のあることにつき善意であつた等の特段の事情のない限り、譲渡を目的とする法律行為をしただけで当該農地の所有権を取得したと信じたとしても、このように信ずるについては過失がないとはいえないというべきである。

最高裁昭和63年12月6日判決

農地の譲渡を受けた者は、通常の注意義務を尽くすときには、譲渡を目的とする法律行為をしても、これにつき知事の許可がない限り、当該農地の所有権を取得することができないことを知り得たものというべきであるから、例えば、譲渡についてされた知事の許可に瑕疵があつて無効であるが右瑕疵のあることにつき善意であつた等の特段の事情のない限り、譲渡を目的とする法律行為をしただけで当該農地の所有権を取得したと信じたとしても、そのように信じるにつき過失がないとはいえないものというべきである。

農地賃借権の時効取得に関する最高裁判例

許可の要否

最高裁平成16年7月13日判決

他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは、民法163条の規定により、土地賃借権を時効により取得することができるものと解すべきである(最高裁昭和42年(オ)第954号同43年10月8日第三小法廷判決・民集22巻10号2145頁)。他方、農地法3条は、農地について所有権を移転し、又は賃借権等の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならないこと(1項)、この許可を受けないでした行為はその効力を生じないこと(4項)などを定めている。同条が設けられた趣旨は、同法の目的(1条)からみて望ましくない不耕作目的の農地の取得等の権利の移転又は設定を規制し、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ろうとするものである。そうすると、耕作するなどして農地を継続的に占有している者につき、土地の賃借権の時効取得を認めるための上記の要件が満たされた場合において、その者の継続的な占有を保護すべきものとして賃借権の時効取得を認めることは、同法3条による上記規制の趣旨に反するものではないというべきであるから、同条1項所定の賃借権の移転又は設定には、時効により賃借権を取得する場合は含まれないと解すべきである。

以上によれば、時効による農地の賃借権の取得については、農地法3条の規定の適用はなく、同条1項所定の許可がない場合であっても、賃借権の時効取得が認められると解するのが相当である。

この記事は弁護士が監修しています。

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