共有物を分割した際に課される税金について教えてください
共有物を分割した場合、譲渡所得税と不動産取得税が問題となります。
譲渡所得税
現物分割
①「一の」土地の場合
共有に係る一の土地について持分に応じた現物分割がされたときは、分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます(所得税基本通達33-1の6、法人税基本通達2-1-19)。「一の」土地とは1筆ではなく一団の意味に解されます。
②隔地間の数個の土地の場合
隔地間の数個の土地について、共有者がそれぞれ単独所有権を取得することを目的として行われる持分交換については、共有物分割に関する通達の適用はなく、固定資産の交換の特例(所得税法58条、法人税法50条)に定める要件を具備しなければ課税対象となります。
賠償分割・競売分割
これらについては上記通達の適用はなく課税対象となります。
現物分割により生じる過不足を金銭の支払で調整する部分的価格賠償の方法により共有物を分割する場合は、当該調整のための金銭の支払は譲渡があったものとみなされ、譲渡所得税が課されます。
不動産取得税
共有物の分割により他の共有者の有していた持分を取得することは、本来、地方税法73条の2第1項にいう「不動産の取得」に当たって不動産取得税が課されます。すなわち、不動産取得税は、いわゆる流通税に属し、不動産所有権の移転の事実自体に着目して課されるものであって、不動産の取得者が取得する経済的利益に着目して課されるものではありませんから、所有権移転の形式により不動産を取得する全ての場合をいうものと解すべきであり、その取得により経済的な利益の増加を来す場合に限られるものではないと解されています(最判昭和53・4・11民集32巻3号583頁)。
しかし、平成13年の地方税法改正により、「共有物の分割による不動産の取得(当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)」については、不動産取得税を課することができない旨の規定が新設され(地方税法73条の7第2号の3)、これに該当する場合は非課税とされました。
複数の不動産が一括分割により分割された場合における持分超過部分の有無及び額の判断の方法が問題となるところ、①分割の対象とされた個々の不動産ごとに分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することとなった不動産の価格とを比較して判断するという考え方(個別説)と、②分割の対象とされた不動産全部について分割前の持分の割合に相当する価格の合計と分割後に所有することとなった不動産の価格の合計とを比較して判断するという考え方(全体説)がありましたが、最判令和4・3・22民集76巻3号310頁は個別説を採用しました。
最判令和4・3・22民集76巻3号310頁・判時2532号30頁・判タ1498号15頁
「共有物の分割による不動産の取得に係る持分超過部分の有無及び額については、複数の不動産を一括して分割の対象とする場合であっても、その対象とされた個々の不動産ごとに判断すべきものと解するのが、不動産取得税の課税の仕組みと整合的であるというべきであり、また、地方税法73条の7第2号の3括弧書きの『分割前の当該共有物に係る持分の割合』という文言にも沿う解釈ということができる。したがって、複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割により不動産を取得した場合における持分超過部分の有無及び額については、分割の対象とされた個々の不動産ごとに、分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することとなった不動産の価格とを比較して判断すべきものと解するのが相当である。」
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共有物分割のトラブルについてのご相談は、共有物分割のトラブルのページをご覧ください。