夫婦もしくは離婚した元夫婦間における共有物分割請求の注意点

夫婦間もしくは離婚した元夫婦間における共有物分割請求も手続的には適法ですが、離婚の際の財産分与の手続との関係が問題となります。また、婚姻中であれば相手方配偶者に対する扶助義務の問題も生じます。

夫婦間における共有物分割請求の適法性

夫婦間において共有物分割請求が行われる事案では、既に婚姻関係が破綻しているものと思われ、共有不動産の分割については離婚における財産分与において処理されるべきことが原則ですが、このような場合に提起された共有物分割請求訴訟も手続としては適法とされています。

権利濫用

夫婦もしくは離婚した元夫婦間における共有物分割請求については、上記の通り訴え自体は適法とされるものの、権利濫用として争われることになります。
婚姻中、離婚訴訟・財産分与調停中、離婚後の分割請求の場合に分けて説明します。

婚姻中

権利濫用に該当するとされた裁判例として、大阪高判平成17・6・9判時1938号80頁などがあります。一方、投資用に購入したマンションで生活の本拠として利用されていない事案で権利濫用に該当しないとされた事例もあります

*大阪高判平成17・6・9判時1938号80頁
「Yが指摘するとおり、本件不動産は、XがYとの婚姻後に取得した夫婦の実質的共有財産であり、しかも現実に自宅として夫婦及びその間の子らが居住してきた住宅であり、現状においてはXが別居しているとはいえ、Y及び長女Aが現に居住し続けているものであるから、本来は、離婚の際の財産分与手続にその処理が委ねられるべきであり、仮に、同手続に委ねられた場合には、他の実質的共有財産と併せてその帰趨が決せられることになり、前記認定に係る、資産状況及びYの現状からすると、本件不動産については、Yが単独で取得することになる可能性も高いと考えられるが、これを共有物分割手続で処理する限りは、そのような選択の余地はなく、Xが共有物分割請求という形式を選択すること自体、Yによる本件不動産の単独取得の可能性を奪うことになる。
そして、前記認定のとおり、Xは、離婚調停の申立て自体は経由しているものの、いまだ離婚訴訟の提起すらしておらず、現に夫婦関係が継続しているのであるから、本来、Xには、同居・協力・扶助の義務(民法752条)があり、その一環として、Y及び病気の長女Aの居所を確保することもXの義務に属するものというべきである。ところが、Xは、病気のために収入が減少傾向にあるとはいうものの、依然として相当額の収入を得ているにもかかわらず、これらの義務を一方的に放棄して、Yや精神疾患に罹患した長女のAをいわば置き去りにするようにして別居した上、これまで婚姻費用の分担すらほとんど行わず、婚姻費用分担の調停成立後も平成16年9月以降は、月額わずか3万円という少額しか支払わないなど、Yを苦境に陥れており、その結果、Yは、経済的に困窮した状況で、しかも自らも体調が不調であるにもかかわらず、1人でAの看護に当たることを余儀なくされている。その上、本件の分割請求が認められ、本件不動産が競売に付されると、YやAは、本件不動産からの退去を余儀なくされ、Aの病状を悪化させる可能性があるほか、本件不動産には前記認定のように抵当権が設定されているため、分割時にその清算をすることになり、YとAの住居を確保した上で、2人の生計を維持できるほどの分割金が得られるわけでもないし、Yは、既に満60歳を過ぎた女性であり、しかも原田病や神経症のため通院治療を受けていて、今後、稼働して満足な収入を得ることは困難であるから、経済的にもYは一層苦境に陥ることになる。
これに対し、Xは、現在、進行した前立腺癌に罹患し、その治療などのため、収入が減少傾向にあり、借入金の返済が徐々に困難になっていることから、余命を考慮して、負債を整理するため、本件不動産の分割請求をしているものである旨主張している。
Xの病状からして、上記のような考えを持つこと自体は理解できないでもないが、前記認定事実によっても、その主張自体からも、現時点で、金融機関から競売の申立てを受けているわけでもなく、直ちに本件不動産を処分しなければならないような経済状態にあるとは認め難いし、仮に、そのような必要があるとしても、事務所不動産を先に売却して、事務所自体は他から賃借することも考えられるのであって、どうしても負債整理のために本件不動産を早期に売却しなければならない理由も認められない。また、上記のような困難な状況にある妻であるYや子供らの強い反対を押し切り、Yらを苦境に陥れてまで負債整理を行わなければならない必然性も見出し難い。
~以上の諸事情を総合勘案すると、Xの分割の自由を貫徹させることは、本件不動産の共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、分割の必要性と分割の結果もたらされる状況との対比からしても、Xの本件共有物分割請求権の行使は、権利の濫用に当たるものというべきである。」

離婚訴訟・財産分与調停中

離婚訴訟や財産分与調停が係属中であれば、原則、これらの手続において分割されるべきですが、被告にとって特段支障のない場合には分割請求が認められることもあります。

離婚後

離婚後で財産分与調停等の手続も行われていない場合には共有物分割の手続で分割されることが認められやすいと思われます。

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