任意売却すると決めたにもかかわらず相手方が売却に応じてくれません

共有者間で共有不動産を任意売却する約束をしたのですが、相手方が売却手続に協力してくれません。このような場合でも共有物分割請求訴訟で分割することができるのでしょうか?

分割協議の成否

既に分割の協議が成立している場合、共有物分割請求訴訟は訴えの利益を欠き、却下されます。この場合、共有物分割請求ではなく、協議内容の実行を求めることになります。
任意売却するとの合意があった場合に、協議が成立したと主張されることがありますが、当事者の意思が、任意売却をすることのできる見込みがなくなった場合に共有物分割を求めることができると解されるか否かによります。
このような場合に共有物分割請求を認めた裁判例が幾つかあります。このうち東京高判平成6・2・2判タ879号205頁を紹介しますので参考にしてください。

東京高判平成6・2・2判タ879号205頁
「本件不動産の共有者であるXとYとは、本件不動産について、これを任意に売却し、売却に係る費用を差し引いた残金を持分割合に従って配分するとの分割方法の合意をしたが、任意売却の期間及び任意売却ができない場合の措置については何らの合意もしなかったところ、右の合意成立後3年半近く経った現在も、なお任意に売却できる見込みがない状態にあるということができるのであって、このような場合には、共有者は、右の合意にもかかわらず、分割について別途の協議がされるなど特段の事情のない限り、分割の協議調わざるものとして、共有物の分割を裁判所に請求し、競売を求めることができるものと解するのが相当である。けだし、本件和解は、共有物分割の方法として本件不動産を売却しその代金をもって分割することとし、そのための手段として任意売却をすることとしたものであるが、これは合理的期間内に本件不動産を任意売却することかできることを前提としてされたものであって、右の期間内に任意売却をすることのできる見込みがなくなった場合には、右の合意はその前提を欠くことになってその効力を失い、特段の事情のない限り、改めて任意売却に代わるべきものとして競売を求めることができるものと解するのが、当事者の合理的な意思に合致するというべきであり、かつ、本件和解後3年半近く経過した現在もなお任意に売却できる見込みがない状態にある以上、合理的期間内に本件不動産を任意売却することのできる見込みがなくなったといえるからである。~」

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