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競売による分割

「競売による分割」については「共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるとき」に採用されるとされていますので、現物分割が優先されることになります。
また、当事者が全面的価格賠償を希望した場合、最高裁平成8年10月31日判決(民集50巻9号2563頁)が述べる、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる「特段の事情」の有無が判断されることになります。
以上の判断を経て、現物分割になじまず、全面的価格賠償も採用されない場合、競売による分割が採用されることになります。
裁判例を分析してみると、競売が採用された事案は、(1)誰も現物での取得を希望していない場合、(2)当事者が競売に同意しているか、少なくとも競売に異議を唱えていない場合が多いようです。ただし、この場合でも、判決では「共有物の現物を分割することができない」もしくは「分割によってその価格を著しく減少させるおそれがある」と認定されています。
変わった事案では、東京地裁平成26年11月4日判決(平成26年(ワ)9446号)が、本件土地建物について強制競売手続が進行している現状等を踏まえ、分割方法として競売手続に付し、代金から競売費用を控除した残額を持分割合に応じて取得させるのを相当としています。

和解により競売に付すことができるのか?

共有物分割請求訴訟で、原告と被告が競売により分割することに同意した場合、その旨の和解をすることができるのでしょうか?
境界確定訴訟とは異なり、共有物分割は協議により行うことができますので、和解により現物分割もしくは価格賠償により分割する旨の和解をすることはできます。
しかし、競売については、国家機関たる裁判所が一定の要件の下で法定の売却条件で実施する手続ですから、当事者が自由に利用できるわけではないとの見解もあります。
具体的には、競売に付す旨の和解調書により、当事者が民事執行法に基づき競売の申立てを行うことができるのかという問題です。
実際上、共有物分割請求訴訟を担当する裁判官の判断及び競売を行う執行裁判所の判断次第ということになります。

大阪高裁平成2年8月17日判決(平成2年(ラ)151号)

もともと共有物をいかに分割するかは当事者が自由に協議して決定することができるのであるが、協議が調わないときに共有者が提起する共有物分割の訴(民法第258条第1項)は、実質的には非訟事件であって形式的形成訴訟と解されており、裁判所は当事者の申立や主張に拘束されずに後見的な判断で分割の実施方法を適宜に定めねばならないのである。そして、分割の方法は現物分割を原則とするけれども、「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ又ハ分割ニ因リテ著シク其価格ヲ損スル虞アルトキ」には、共有物を換価した上で代金を分割する方法によって共有物を分割するために、「裁判所ハ其競売ヲ命スルコトヲ得」(同条第2項)るものとされているのであって、同条項が裁判所が競売を命ずることとしているのは、競売手続による換価が、当事者の私的な売却方法ではなく、国家が営為する競売手続を利用する換価方法であるから、換価の許される場合に当るか否か、共有物分割の方法として適当か否かの点について、当者の申立や主張に拘束されない裁判所の判断を経させることに重点があるものと解される。したがって、裁判所が当事者の申立や主張に拘束されずに上記諸点について実質的に判断して手続に関与するのであれば、必ずしも判決でなくとも、裁判上の和解により競売手続による換価を合意することも許されるというべきである。」

東京高裁昭和63年7月27日判決(昭和63年(ネ)117号)

「民法28条に基づく共有物分割請求の訴えは、形成訴訟であり、実質的非訟事件であると解されているけれども、共有物分割につき代金分割の実施方法として、競売によるべき旨の合意を裁判上の和解によって有効になし得るものとすることは何ら差しつかえない。けだし、右競売によるとする旨の合意は、当事者の任意に設定し得る法律関係であり、これにより、当事者に競売申立の権能を与える効果を生ずるにすぎない(この点に関する限り抵当権設定契約と何ら異ならない。)のであるから、競売の実施は必ず判決によらなければならないものと解すべき合理的理由はない。そして、当事者は、この和解により、民事執行法195条181条1項1号に基づく競売の申立をなし得るものというべく、このほかに、更に競売を命ずる旨の判決を要するものではないといわなければならない」

無剰余競売はできない

競売手続において、民事執行法63条で、優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき、競売の手続は取り消されるとされています。
競売を命じる判決による競売申立においても上記条項が適用されると、抵当権の被担保債権が不動産の評価額を上回る場合には競売ができなくなってしまいます。この点につき、最高裁平成24年2月7日決定は上記条項が適用されるとしました。
また、京都地裁平成22年3月31日判決は、現時点の価格からすれば競売手続が無剰余取消しとなる可能性があるとしても、共有物分割請求は権利の濫用に当たらないし、訴えの利益を欠くことにはならないとしています。

最高裁平成24年2月7日判決(集民240号1頁)

「民法258条2項所定の競売を命ずる判決に基づく不動産競売について、民事執行法59条が準用されることを前提として同法63条が準用されるものとした原審の判断は、正当として是認することができる。」

(原審)東京高裁平成23年3月31日決定(平成22年(ラ)2289号)

共有物分割請求訴訟により競売により分割する旨の判決を得た後、同判決に基づき競売が開始されたところ、買受可能価額3703万2000円に対し抵当権の被担保債権等が2億6612万円であったため、民事執行法63条により競売手続が取り消されました。この取消決定につき争われた事案の控訴審です。
「(2)本件執行抗告は、民法258条2項に基づき裁判所が共有物の分割のための競売を命じたことによる不動産競売(以下「共有物分割のための不動産競売」という。)においては、民事執行法63条所定の無剰余取消しの規定が適用されないことを前提として、原決定の取消しを求めるものであるが、同法195条は、共有物分割のための不動産競売については担保権の実行としての競売の例による旨規定し、何らの留保なく同法63条を準用しているから、共有物分割のための不動産競売にも無剰余取消しの規定が適用されると解するのが相当である。
(3)抗告人らは、共有物分割のための不動産競売が無剰余で取り消された場合、不動産の共有者は、裁判所が共有物分割のための不動産競売を命じたにもかかわらず、裁判所が命じた方法による共有物の分割を行うことができないことになり不都合であるから、共有物分割のための不動産競売には無剰余取消しの規定が適用されない旨主張するが、共有に属する不動産について共有物の分割手続が行われている場合に、先順位抵当権者等が自ら競売の申立てをしないのは、現状では担保債権の十全な満足を得ることができないため当該不動産の価額の値上がりを待っているなどの事情があることが通常であり、先順位抵当権者等の上記期待を無視して、無剰余であるにもかかわらず、共有物の分割手続を終了させるためだけの目的で共有物の分割のための不動産競売を進行させることは相当でないから、所論は採用できない。」

京都地裁平成22年3月31日判決(平成21年(ワ)909号)

「本件土地のみについて共有物分割のための競売を申し立てたとしても、現時点の価格からすれば、競売手続が無剰余取消しとなる可能性がある(民事執行法195条、188条、63条1項2号、2項本文)。しかし、優先債権者である本件根抵当権者が同意をすれば手続は取り消されない(同法63条2項ただし書)し、原告らは本訴において本件土地について競売を命ずる判決を得たとしても、直ちにこれに基づく競売の申立てをすべき義務を負うものではなく、将来的には、被担保債権がFの弁済により減少し、あるいは不動産市況の変化により、剰余金を受け取る可能性が残されているのであるから、近時の状況からすれば前記の取消しの可能性があるからといって、本訴請求が権利の濫用に当たる、あるいは訴えの利益を欠くということはできない。」

共有者も競売に参加することができるのか?

強制競売や担保不動産競売において、債務者は競売に参加して買受けの申出をすることができません(民事執行法68条、188条)。
しかし、競売による分割のような形式的競売について、上記条項は適用されないと解されています。
すなわち、競売による分割により競売になったとしても、共有者は競売手続で入札し、落札により物件を取得することができるのです。
ただし、競売手続には第三者も入札する可能性がありますので、最高価で入札しなければなりません。

使用借権と競売

東京地裁平成20年6月25日判決は、対象建物について使用借権が存在しているとしても、それ自体競売による代金分割を妨げる事由とはならないとしています。

東京地裁平成20年6月25日判決(平成19年(ワ)29953号)

「被告らは、本件建物の1階部分について使用借権を有する旨主張しているが、仮に使用借権が存在しているとしても、それ自体競売による代金分割を妨げる事由とはならない(なお、その存否等については競売を実施し、売却条件を定める執行裁判所がその権限において判断すべきものである。)。」

共有に関する債権の弁済

共有に関する債権につき、「共有者の一人が他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは、分割に際し、債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる。」(民法259条1項)、「債権者は、前項の弁済を受けるため債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要があるときは、その売却を請求することができる。」(同条2項)と規定されています。
この条項が適用された裁判例があります。

東京地裁平成18年10月5日判決(平成18年(ワ)11424号)

「原被告が共有物である本件不動産の管理・保存のために支出ないし負担した費用額について検討する。
(1)○○○○を総合すると、原告は、本件調停成立後、本件不動産につき原被告の持分各2分の1の割合で平成15年○月○○日相続を原因とする所有権移転登記をするため、別紙「請求書」と題する書面の番号○○ないし○○記載の登記費用等合計12万9430円の費用の支出をしたことが認められ、これらの費用は、共有物である本件不動産の保存のための費用であると認められるから、民法259条1項所定の共有に関する債権というべきである。
そうすると、被告は、原告が支出した上記費用の2分の1に相当する6万4715円を負担すべきところ、本件不動産の競売による代金分割に際し、原告は、民法259条1項により、本件不動産の競売により被告が持分に応じて分割取得する売得金から6万4715円を共有に関する債権6万4715円の弁済に充てることができるというべきである。」

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

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