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移転登記請求の問題

現物分割や全面的価格賠償により、物件を取得した当事者(例えば原告)が、「○○の土地を原告の所有とする」という判決を得ただけでは所有権移転登記を受けることができません。所有権移転登記を受けるためには「被告は、原告に対し、○○の土地につきこの判決確定の日の共有物分割を原因とする移転登記手続をせよ」との判決を得る必要があるのです。
それでは、現物分割もしくは全面的価格賠償の判決で、当然に、移転登記手続を命じる判決を得ることができるのでしょうか?
この点につき、訴えがないため移転登記を命じなかった裁判例、訴えがないにもかかわらず移転登記を命じた裁判例が、それぞれ多数存します。
移転登記請求の問題については、とりわけ、原告が現物分割を求め、これに反対する被告が現物分割により物件を取得する場合、所有権移転登記を命ずる判決を得るためには反訴を提起する必要があるとするのは問題です。何故なら、この場合、被告が反訴で所有権移転登記手続を求めるのは、予備的反訴であるにせよ、矛盾した態度を取ることになるためです。
当事者による移転登記手続請求がないにもかかわらず、移転登記手続を命じる裁判例も多数存するのは、理論的な面はもとより、これを命じないと結論として落ち着きが悪いとの判断があるのではないでしょうか。
しかし、この問題について実務の考え方は定まっていませんので、注意して訴訟を遂行する必要があります。

当事者が移転登記を求めなかったため移転登記を命じなかった裁判例

当事者が移転登記手続を求めなかったため、判決でも移転登記手続を命じなかった裁判例は多数ありますが、東京地裁平成5年6月30日判決はこれを明確に述べています。

東京地裁平成5年6月30日判決(平成4年(ワ)第11263号)

「被告らは、現物分割に伴う登記手続についてまで裁判することを求めたが、その旨の訴えを提起したものではなく、本件訴えは、原告らが共有物の分割を求めるに止まるものであるから、現物分割に伴う登記手続を命ずる裁判はしない。」

登記請求がなくても登記手続を命じた裁判例

東京地裁平成15年12月2日判決(平成14年(ワ)16133号)

「なお、上記移転登記手続は、原告らの本件土地の共有持分権に基づくものではないから、原告らの本訴主位的、予備的及び再予備的請求を認容したものではないことはいうまでもないところ、非訟事件の実質を有する共有物分割訴訟においては、本来別個の訴訟事項である移転登記手続請求であっても、裁判所の裁量的判断として、共有物分割の結果生じた形成の効果を確保するために移転登記手続を職権で命ずることができ、同様に、明示の申立てがなくとも、遅延損害金の支払を命じ、また、共有者の実質的公平を図るために履行確保の必要があると認められる場合には、職権で引換給付を命ずることができると解するのが相当である(この引換給付を命ずることは、請求の一部棄却の実質を有するものではないから、主文において被告の反訴請求を一部棄却する必要はない。)。」

鹿児島地裁平成14年11月19日判決(平成12年(ワ)第220号)

「また、当事者双方は、いずれも分割により取得した土地について、相手方に対し、持分全部移転登記手続の履行を希望しているので、共有物分割の訴えの本質が形式的形成訴訟であることを考慮して、家事審判規則49条を類推し、登記手続の履行を命じることとする。」

大阪高裁平成11年4月23日判決(平成10年(ネ)1315号)

「共有物分割の結果に伴う登記などの対抗要件の具備については、右にみた共有物分割の目的を考えると、共有物分割の内容ではなく、分割の結果の履行の問題に過ぎず、将来の請求としての申立てがないのに、これを命ずることは、家事審判規則49条と同様の規定をもたない共有物分割の手続にあっては、処分権主義に反するという考えも成り立ち得ないではない。しかしながら、共有物分割の内容として、裁判の主文において、賠償金の支払を命ずることができると解する以上は、同じ主文において、その反対給付となるべき対抗要件の具備の手続について、できるだけ履行を確保する手段を講ずることも、まだ許されるものと思料される(裁判により共有物の分割が形成されるものである以上、賠償金の支払がない時には、当該共有物を改めて競売に付して、その売得金の分配を命じることは、理論上は困難であると思科される。)。」

この記事は弁護士が監修しています。

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