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現物分割について

現物分割の法律関係

土地が現物分割された場合、その法律関係はどのように理解されるでのでしょうか?
この点、AとBが、共有物をA地とB地に現物分割する旨の裁判上の和解をした後、Aが、法務局に対し、A土地につきA単独でA名義に所有権移転登記の申請をしたところ、法務局がこれを却下し、高裁もこれを支持した事例があります。
Aが最高裁に上告したところ、最高裁昭和42年8月25日判決は、AとBは、持分を交換または売買したものであると判示しました。
登記手続としては、AとBの共有土地を2筆に分割し、AとBがそれぞれ1筆ずつ取得する場合、まず、「AとBの共有名義」の土地が2筆でき、Aが取得する土地についてはAはBから所有権移転登記をしてもらい、Bが取得する土地についてはBはAから所有権移転登記をしてもらうことになります。

最高裁昭和42年8月25日判決(民集21巻7号1729頁)

「共有物の分割は、共有者相互間において、共有物の各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行なわれることであつて(民法249条、261条参照)、所論のごとく、各共有者がその取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではない。したがつて、一箇の不動産が数人の共有に属し分割の結果各人がその一部ずつについて単独所有者となる場合には、まず分筆の登記手続をしたうえで、権利の一部移転の登記手続をなすべきである。」

分割対象の確定

現物分割を求める場合、各共有者が取得すべき部分が図面によって客観的に特定される必要がありますので、土地家屋調査士に依頼して測量図面を作成し、裁判所に提出する必要があります。
判決もしくは和解にて土地の現物分割が行われても、所有権移転登記を受けるためには、その前提として分筆登記をする必要があります。そして、分筆登記のためには、広大地からわずかな土地を分筆する等の例外を除き、分筆後の各土地の全てについて、正確な調査・測量に基づいて作成された地積測量図が作成されなければなりません。そのため、境界の一部に争いがある土地の分筆は受理されないこととなっています。
したがって、土地を現物分割する旨の判決があっても、それだけでは分筆登記ができるとは限りませんので、事前に土地家屋調査士に相談して入念な準備を行う必要があります。
原告が現物分割を求めている事案において、東京地裁昭和62年5月29日判決は、隣接する国有地との間の境界が明確でなく、その確定に長期の日時を要することが認められるので、現時点での現物分割は不可能であることが明らかであるとして訴えを却下しました。
ただし、隣地との境界が不分明であっても競売することに支障はありませんので、競売による分割は行うことができます(東京地平成17年10月11日判決)。
東京地裁平成4年2月28日判決は、建築基準法上の道路位置指定を受けている共有土地の分割請求も認められるとしています。

東京地裁昭和62年5月29日判決(昭和60年(ワ)763号)

「原告は本件土地の現物分割を求めているところ、弁論の全趣旨によれば、本件土地は、これに隣接する国有地との間の境界が明確でなく、その確定に長期の日時を要することが認められるので、現時点での現物分割は不可能であることが明らかであるから、本件訴えはその利益がないというべきである。」

東京地裁平成17年10月11日判決(平成16年(ワ)10263号)

「被告は、本件土地と隣地との境界が不分明であると主張するが、仮にそうであっても、その事実が本件土地を競売することの支障になるものとは認められないから、この主張を採用することはできない。」

東京地裁平成4年2月28日判決(平成2年(ワ)3968号)

「被告は、分割の結果道路としての用を妨げるから、本件土地の道路位置指定が廃止されない限り、その共有物分割請求は権利の濫用となり許されない旨主張する。
しかしながら、建築基準法42条1項5号によって道路位置指定を受けた私道は、同法上の公法的規制(同法44条、45条等)を受け、道路としての機能を維持し公共の安全の目的のため提供しなければならず、その反面として一般の通行を認めなければならないのされているけれども、この一般通行の利益は右のような公報的規制によって一般人が反射的に享受し得る利益であって、私法上の通行権を生じさせるものではないと解するのが相当であるとともに、あくまで私道であるから、共有物の分割を含めその所有関係に変動を生ぜしめる処分は所有者である私人の自由に任されていることはいうまでもないし、右所有関係の変動によって右公法的規制に直ちに影響が及ぶものでないことも明らかである。
したがって、被告の権利濫用の抗弁は理由がなく、本件土地について共有物分割をするに格別の支障はないというべきである。」

現物分割の考え方

土地の分割につき、当事者が現物分割を希望しても、(1)当該土地を現物で分割することが不可能であるか、あるいは、(2)現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがある場合には、現物分割は認められません。
そのうえで、現物分割が認められるには、土地の有効利用が図られ、且つ、当事者全員にとって公平な分筆がなされる必要があります。

現物分割の具体例

土地を現物分割した裁判例はたくさんあります。裁判例では具体的にどのように分割されているのか参考にしてください。

東京地裁平成28年7月20日判決(平成26年(ワ)18742号)

画地Aは原告の居住建物の敷地として使用され、遺産分割協議の結果、同建物が原告の所有となったこと、一方、画地Bは被告所有地と一体としてコインパーキングとして利用されていること等の事情により、画地Aを原告に、画地Bを被告に取得させたうえで、鑑定に基づき、評価額の過不足を価格賠償で調整しました。

東京地裁平成28年6月30日判決(平成27年(ワ)22108号)

「本件土地は登記簿上の面積でも約485平方メートルあり、現物分割として3分割した場合であっても、分割後の各土地は独立して建物を建築するなどの用途に供するに十分な面積を維持することが可能である。そして、分割後の各土地の価値を均等にするためには、同程度の接道を確保しつつ、同程度の面積になるように分割するのが相当であるところ、原告の主張する分割方法は、上記要請を充たすものということができ、これにより価格の著しい減少が生じるなどとの事情をうかがわせる証拠はない。」として原告が主張する線で現物分割しました。

東京地裁平成28年4月14日判決(平成25年(ワ)26540号)

現物分割の主文で、「1別紙物件目録記載の不動産を別紙分割目録及び別紙分割図面のとおり分割する。」としたうえで、「2被告ら及び原告X1は、原告X2に対し、本判決前項の判断が確定することを条件として、共有物分割を原因として、~土地について、持分移転登記手続をせよ。」としました。
また、農地については「農地法5条1項の許可が必要であり、原告ら及び被告らにおいて同許可手続を行うこととし、また、同許可を条件として、共有持分移転登記手続請求を認めることとする。」と判示して、主文で「原告ら及び被告らは、別紙物件目録2記載の土地について、東京都知事に対する農地法5条1項の規定による所有権移転の許可手続をせよ。」としました。

東京地裁平成27年11月30日(平成24年(ワ)20806号)

土地上に存する建物の負担については考慮を要しないとして現物分割を命じました。
「3本件土地の分割方法について(本訴請求)
本件土地の分割方法として、本件土地の全部又は一部の現物分割とし原告が南側の土地を取得し、被告が北側の土地を取得することは、当事者の意向が一致しており、この事実に、本件土地の形状及び広さを併せ考慮すると、その方法によることが相当である。
そして、上記2記載のとおり、本件建物に対する○及び○の使用借権は認められず、本件会社の本件土地に対するなんらかの使用借権がかつて存在したとしても、現段階においては貸主の請求に対抗できないものとなっているものであるから、北側土地と南側土地を等価値となるように分割すべきである。そして、鑑定の結果によると、原告主張の分割方法が、上記の分割方法に合致すると解される。
もっとも、ここで、被告が取得すべき土地には、本件建物の大部分が存在し、○及び○が居住していて、権限がないとしても、その敷地の所有者が○及び○から明渡しを受けるためには、事実上の負担があることを考慮すべきかが問題となる。しかし、原告が取得すべき土地についても本件建物の一部が存在し、現実には、本件土地全体について、○と○が一体管理していることからすると、事実上明渡しを求める負担があることは同様であって、負担の差は誤差程度と解されることからすると、原告と被告が取得する土地の価値を算出するに際しては、その差を考慮する必要はないと解される。
また、被告の真意を汲めば、上記のとおり、被告が取得すべき土地について本件建物等の負担を考慮しないとしても、本件建物を保存し、被告の姪らである○及び○の利益を守るため、被告が主張するとおりの方法で現物分割をし、被告が取得する土地の価値が高い点については代償金によって調整すべきと主張するとも考えられる。しかし、その分割方法によったときは、原告が取得する土地の面積が70平方メートル未満となり、その交換価値が減ずると推認できること、社会経済上の利益を考慮するとしても本件建物は未登記で建築後60年近くが経過していることからするとそれを保存する必要性は乏しいこと、その方法によっても本件建物のうち原告が取得すべき土地上の部分は最終的に壊す必要が生じることに変わりがなく、その場合、本件建物の存続に強度上や行政法規等の実際上の問題が生じないかが判然としないこと、鑑定時と本件口頭弁論終結時の間に1年が経過し、本件土地全体の価値の変動もうかがえ、合理的な代償金の額の算定も困難であること、被告においてその代償金を即時支払う意思と能力があることの立証はないことからすると、本件については、原告の主張するとおり、全部現物分割によることが相当である。」

東京地裁平成19年7月26日判決(平成18年(ワ)4425号)

「本件土地においては建築物の敷地最低面積について地区計画の定めはなく、本件土地の北西方に位置する練馬区○○地区、○○地区、○○地区等においては、地区計画によりこれが110平方メートルと定められていることが認められるところであるが、上記のとおり本件土地を4分割した後の1区画の面積は、他の地区で定めた敷地最低面積もおおむね満たすものとの認められる。また、証拠(略)によれば、本件土地周辺において、土地面積が30坪程度と認められる住宅が相当数存在するものと認められることなども併せ考えると、本件土地を110平方メートル程度の区画に分割することは、本件土地の標準的使用や周囲の状況に照らし、特段の不合理な点があるとは認められない。」

東京地裁平成19年6月26日判決(平成17年(ワ)24593号)

「3共有物分割について原告が分割を求める本件土地1は880.21平方メートルもの広さを有する土地であって、これを現物分割することは十分可能であると認められること、原告の所有する本件建物1、同付属建物、本件建物2の3棟は本件土地1の南西部分に、被告の所有する本件建物3はその北東部分に、それぞれ位置していること、以上の事実に照らすと、原告からの分割請求に基づいて、本件土地1を南西部分と北東部分にそれぞれ原告と被告の持分割合に応じて分割し、このうちの南西部分を原告に、北東部分を被告にそれぞれ帰属させることとするのが相当である。」

東京地裁平成18年11月9日判決(平成16年(ワ)26556号)

3筆の土地について、南方土地は、被告らの共有土地と一体として利用されているから、被告らに分割し、北方甲乙地は、原告に分割し、この分割によって、不足する被告らの持分価格に相当する金額を代償金として、原告に対し、被告各自に対する支払を命じました。

東京地裁平成18年8月28日判決(平成17年(ワ)24077号)

次のように判示して別荘地を現物分割し、過不足については部分的価格弁償によるとしました。
「(ア)そこで、本件土地にどのように分割線を引くかであるが、この点、原告らの分割案は、原告ら、被告らの各持分比率の合計を考慮しつつも、原告らの共有部分、被告らの共有部分がいずれも長方形に整形され、北側道路との接道部分がほぼ同じ長さとなるように分割線が引かれているというものである。しかし、結果として、双方の共有部分の面積比は必ずしも持分比率の合計と一致しない。
他方、被告らの分割案は、各共有部分の面積比が持分比率の合計にほぼ一致するが、被告らの共有部分は長方形に整形されているのに対し、原告らの共有部分は長方形ではない上、北側道路との接道部分は原告らの共有部分の方が約27メートル短くなるというものである。
(イ)ところで、本件土地付近は、電気、水道及びガスの設備がない状況にあり、原告ら及び被告らとも、現在、直ちに自分でその土地を利用することは想定していない(弁論の全趣旨)。ただし、本件土地付近はそもそも別荘地として分譲されたものであり、取引事例がないというわけではなく(略)、共有関係を解消した後、各共有者が売却等処分する可能性もないとはいえない。
そうすると、本件土地の分割に当たっても、なるべく処分可能性を維持する、あるいは高める方法で行うのが合理的であって、それが当事者双方の合理的意思とも合致するものと思われる。
そして、前記の本件土地の状況に照らせば、本件土地の場合、北側道路に面しているかどうか、その形はどうかという点が、その価値評価を大きく左右するものと解されるから、本件土地の分割に当たっても、各共有部分において、北側道路との接道部分及び分割後の土地の形状が平等になるよう図るべきであって、北側道路との接道部分がほぼ同じで、かつ、形状も双方長方形となるべく分割線を引くのが相当であり、原告らの分割案はこれに合致するということができる。
また、原告らの分割案であれば、本件分割後、各取得地について共有関係にある原告ら、あるいは被告らが、その共有関係を解消しようとする場合であっても、北側道路との接道部分や地形の点において平等を図った分割を実現しやすいということができる。
なお、原告らの分割案を示した別紙実測図(分割予定図)における本件土地の実測の総面積は登記簿上の地積と食い違っているが、弁論の全趣旨によれば、原告らは、別紙実測図(分割予定図)を作成するに際し、周囲の土地所有者の同意を得た上で本件土地を測量していることが認められ、加えて、その図面上の本件土地の境界線上には隣地との境界点(コンクリート杭)も示されており、各隣地との境界線も明確にされたことが推測されるから、現地での復元が可能であり、容易である。
そして、他に上記図面の正確性を疑うべき事情も窺われないから、実測面積と地積との食い違いをもって、原告らの分割案を不相当とする事情ということはできない。」

東京地裁平成18年8月7日判決(平成15年(ワ)23854号)

原告らの調整金を伴う現物分割又は全面的価額賠償による共有物分割方法の主張は適当でないとし、現物分割を命じました。
「ウ上記ア及び前提事実(6)のような本件不動産の利用状況のほか、このように本件不動産が多数の共有者が存在する複雑な所有関係にあること、これら共有者間における本件不動産の分割に関する希望が相互に抵触する関係にあること、しかしながら、いかに別紙物件目録(1)ないし(3)の各土地を分割しようとも、これらの土地上に存する被告Y1の使用借権は存続することにかんがみると、現物分割として、別紙物件目録(4)及び(5)の土地建物を原告らの所有に分割するとともに、別紙物件目録(1)ないし(3)の各土地については、これを一体の土地と見たときの南側部分を被告Y1の所有に分割し、北側部分のうち別紙物件目録(4)及び(5)の土地建物と道路を間に挟むとはいえ近接する東側部分を原告らの、その余の西側部分を被告Y2、同Y3及び同Y4の共有に分割するのが適当と考える。
エこれに対し、原告らは、調整金を伴う現物分割又は全面的価額賠償の方法によって、原告会社がより多く又は全面的に土地を取得したい旨の希望を述べてもいるけれども、このような金銭支払につき原告会社が十分な支払能力を有する旨概括的に主張するにとどまることや、本件訴訟の経過等の弁論の全趣旨にかんがみると、金銭支払を伴う上記の分割方法が適当であるとは必ずしもいえないというべきである。」

東京地裁平成18年3月30日判決(平成16年(ワ)13647号)

当事者の希望が一致する分割線により現物分割しました。
「別紙図面1ないし3は、いずれも分割後に独立して宅地としての利用が可能で、本件土地の接道状況も考慮されたもので、分割案として客観的に合理的なものといえるところ、別紙図面3による分割案は、当事者双方にとって、土地を最高度に有効利用できるものであって、全体の評価が最大であるし、被告は本件土地の南側を取得すると、これと地続きの被告所有土地を有効に利用でき、本件土地のみに着目して間口を等分にすることが当事者間の実質的平等に資するとも言い難いことからすると、別紙図面3による分割が相当とも考えられる。
しかしながら、原告本人尋問の結果や本件訴訟の経緯をみると、原告が、被告との紛争をなるべく回避しようとしていることは明らかであり、このような原告の希望も不合理とはいえず、別紙図面1による分割案も上記のとおり合理的なものであるから、本件土地は、当事者双方の希望が一致する別紙図面1の示す分割線により分割することが相当と判断する。」

東京地裁平成17年12月22日判決(平成16年(ワ)1823号)

本件土地1については、当事者双方の意思を尊重し、原告に単独所有権を取得させ、被告に本件土地2ないし4の単独の所有権を取得させ、それぞれ価格賠償を命じました。
「1本件土地1ないし4の分割方法について検討するに、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地1については、原告は同土地の北側隣に別紙物件目録5記載の土地を所有し、原告被告とも、原告が被告から本件土地1の持分を適正価額で買い取って単独所有することが同土地の有効利用となることに同意すること、他方、本件土地2ないし4については、これらを一体としても建築基準法上の接道義務を満たしておらず、現状の接道状態では建築物が建築できない土地であると推定されること、とはいえ、これらの土地の最有効使用には標準的使用と公法上の規制を考慮した結果、隣接地との一体利用が望ましいと判断される」。
「以上によれば、本件土地1については、当事者双方の意思を尊重して、原告に単独の所有権を取得させることが相当であると認められ、本件土地2ないし4については、有効利用が困難とされる現状においても一体利用が最有効使用に望ましいとされており、仮に本件土地2、本件土地3を当事者各々の単独所有とするならば、本件土地2ないし4の全体としての価値を損なうことになる上、原告には本件土地2ないし4全体の単独の所有権を取得することについて格別の利益がない一方で、被告はその一体利用を希望することに鑑みると、本件土地2ないし4のとおり分筆された経緯についての原告の主張を考慮したとしても、被告に本件土地2ないし4の単独の所有権を取得させることが相当であると認められる。」

東京地裁平成17年11月10日判決(平成16年(ワ)23038号)

原告らは現物分割を、被告らは全面的価格賠償を希望したところ、裁判所は現物分割を採用し、あわせて、被告らに対し、原告ら取得部分の引渡しを命じました。

東京地裁平成17年2月17日判決(平成15年(ワ)10505号)

現物分割により、原告取得部分は単独で、被告ら取得部分については被告らの共有としました。
「(一)本件土地は、物理的に現物分割することは可能であり、現物分割後の土地が狭小であり利用価値がないといった事態は生じず、原告が旧借地法による堅固建物所有目的の借地人として保護を受けることに照らすと、現物分割が本件土地上に存在する建物の存続に影響を及ぼすといった事態や現物分割後に本件(1)土地が堅固建物所有目的の借地でなくなるといったことも考えられない。
(二)そして、原告は、本件(2)土地を取得すれば、前述したような袋地の解消と××の敷地が全て原告単独所有になるというメリットがあり、被告が主張する現物分割案は合理的である。他方、原告が主張する現物分割案は、被告案に比べて原告のデメリットが多く合理的とは言い難い。
(三)そうすると、前記最高裁の判決が摘示する全面的価格賠償の方法により共有物分割を行うことを相当とする特段の事情の存在は認められないというほかない。
従って、本件においては、現物分割によって共有物分割をするのが相当である。」
「3原告が本件(2)土地を取得するという被告の分割案は、前述したように合理的なものであり、原告にとってもメリットが大きいから、かかる方法により本件土地を現物分割し、被告らは現時点では共有状態の解消を望んでおらず被告らの身分関係や所有目的に照らすと、残余の土地は現時点では被告らの共有のままとするのが相当である。」

東京地裁平成16年7月21日判決(平成15年(ワ)22758号)

「本件土地は、間口約2.67メートルから2.65メートル、奥行き約12.81メートルの細長い土地であり、これを原告と被告との持分に応じて南北の境界線で分割した場合、細長い形状の土地となり、それ自体では利用価値が著しく低下するが、本件土地は、その東側において原告所有の○○○番4の土地と、その西側において被告所有の○○○番7の土地にそれぞれ接しているため、これらの土地と一体として利用することにより、利用価値が高められ、現物分割が可能かつ適当であることが認められる。」

東京地裁平成16年3月11日判決(平成15年(ワ)13863号)

3筆の土地につき、建物の敷地を含む土地を原告らの共有で、その余の土地の被告の単独で取得させ、建物については「いわゆる一戸建住宅であり、現物分割は価値を著しく減じ、社会経済的に不可能というべきであって、現に居住する原告X3を含む原告らに取得させ、被告に対しては共有持分割合に応じた適正な価格を取得させる全面的価額賠償によることが最も合理的であると解される」として原告らの共有とし価格賠償により分割しました。

東京地裁平成15年12月24日判決(平成13年(ワ)8492号)

「原告ら及び被告は、本件土地の分割ができれば、本件建物を解体撤去することに異議はない。そこで、当事者の意向を考慮し、本件土地についてのみの分割を行うことにする。」としたうえで、本件土地の西側部分と東側部分に評価額の差があることを考慮して、相当と認める割合での分割を認め、被告の主張する合理的な利用や最大市場価格の確保のために代償分割を考慮すべきものとはいえないとしました。

東京地裁平成15年6月30日判決(平成9年(ワ)19777号)

当事者が提出したA案~G案を詳細に分析して分割線を判断しました。

東京地裁平成15年2月14日判決(平成13年(ワ)23951号)

「分割方法について検討する。本件土地は、九十九里浜に面する山林、雑種地であり、本件土地の中を県道が通っているほかは、現物分割に支障を生ずる事情はない(略)。そして、原告らの内部では、別紙分割目録記載のとおりの分割をすることに合意ができており、被告Y1も別紙分割目録記載17の土地の分割を受けることに異存がない。被告Y2提出の答弁書の内容から同被告が、別紙分割目録記載の分割に異存がないことが推認できる。そして、被告Y3が共有持分を取得する分割目録記載12の土地も私道を通じて公道に接続することになる土地であり、他の共有者も兄弟等血縁者であり、その共有地の処理はその共有者間の協議に委ねるのが相当である。よって、本件土地は、別紙共有目録記載のとおり分割するのが相当である。」

東京地裁平成14年11月29日判決(平成14年(ワ)16923号)

「原告の提案する分割案によれば、各当事者がそれぞれ取得する土地の地積がほぼ均等であること、この分割案について、原告だけでなく、被告Y2も了解していること、被告Y1が自己の意見を明らかにしないことといった事情に鑑みて、原告主張のとおりの分割案で分割するのが相当であると思料する。」

鹿児島地裁平成14年11月19日判決(平成12年(ワ)220号)

「1本件土地の分割方法について本件土地の形状、位置関係、利用状況等にかんがみれば、本件土地は現物分割の方法により分割することが可能であり、当事者双方ともこれを望んでいるから、本件土地の分割は現物分割の方法によるのが相当である。
本件土地を含む一団の土地は、別紙現況図のとおり、全体としてほぼ長方形の形状をしており、その北東側の面は国道に接しているが、他の面はいずれも隣接地に接している。そして、その北西端と南東端にb産業所有の建物4棟が存在するが、両建物の間は更地となっている。このような本件土地の形状及び利用状況を考慮すれば、本件土地は、北西側隣接地との境界線である別紙測量図上のABEの各点を結んだ直線と平行な直線により、北西側部分と南東側部分とに分割するのが適当である。」

東京地裁平成9年6月30日判決(平成5年(ワ)15504号)

現物分割につき、「本件不動産の分割に当たっては、裁判所から前記のとおり勧告がされ、当事者もこれに応じたこと、以後、右勧告及び平成8年○月○日付けの当事者の合意を前提にして、2年近くかけて鑑定作業が進められてきたこと、右平成8年○月○日付けの当事者の合意につき、被告は、これを否定するかのような上申書(略)を提出しているものの、その後提出された上申書(略)では、右合意に基づく鑑定作業を前提にした要望を出していること、鑑定は、裁判所の指示と右合意の結果を踏まえて行われ、その結論も適切なものであると考えられること、本件建物に居住したいという被告の希望についても、原告らが配慮を示していること、既に提訴後4年に達しようとしており、当事者が高齢となっていることを考慮すれば、本件不動産については、当裁判所における共有物分割手続により、鑑定の結果に従って分割することが適当である。」としました。

東京地裁平成9年1月30日判決(平成6年(ワ)5782号)

次のように述べて現物分割が可能としました。
「2前記のとおり、本件各土地の形状、位置関係は実測図のとおりであり、また本件各建物の位置関係は別紙敷地分割図Ⅰ(C案)のとおりであって、概略本件(二)の土地上南側から北側へ本件(四)及び(六)の各建物が、本件(三)の土地上に本件(五)の建物が建築されている。そして、本件各建物は建築後21年ないし32年を経過した老朽建物であり、使用資材の品等、施工とも劣り、当面の使用価値は認められるものの、市場交換価値は全くないものと認められる(鑑定の結果)。右の事実に照らすと、本件各土地を一個に分割しても十分に建物を建築して利用しうる面積及び形状にあることは明らかであって(本件各土地を二分してそれぞれ独立した所有権とした場合、本件建物の一部を取り壊すことになる可能性も否定できないが、本件各建物は市場交換価値は全くないものと認められるから、関係者に対し土地の利用上特段の不利益を与えることはないものと認められる。)、本件不動産は、建物と敷地を基準として現物分割をすることが可能であるといわなければならない。」

東京地裁平成5年6月30日判決(平成4年(ワ)11263号)

「本件土地を現物をもって分割する場合には、被告らの求めるところとは逆に、南側土地を原告らに取得せ、北側土地を本件建物と共に被告らに取得させることとするのが、より合理的であると考えられる。」と判示して現物分割しました。

神戸地裁平成元年6月2日判決(昭和60年(ワ)94号)

「もともと本件各不動産の共有持分割合を定めるに際しては、三者の間で、本件各建物の存在を前提にし、これを基準にして将来分割すべきことが想定されていたのであるから、本件土地を各人の共有持分割合どおりに厳格に三分し、建物を毀損せざるを得ないような結果を容認する分割方法を採用することは適当でなく、あくまで建物を基準にして分割し、その結果生ずる各人の共有持分割合との過不足は、持分を超過して不動産を分割取得すべき者に対し価格賠償を命ずることにより調整するのが相当であると考える」と判示して現物分割しました。

神戸地裁昭和62年9月25日判決(昭和58年(ワ)970号)

共同相続人の一方の生活環境を重視した形で現物分割しました。

分割後の土地に通行地役権を認めた事例

珍しいケースですが、東京高裁平成4年12月10日判決は、共有地を互いの通路として利用する旨の共有者間の合意に、将来分割時に各自に帰属する部分につき、いわば潜在的に通行地役権を設定する趣旨が含まれていたとして、通行地役権を認めました。

東京高裁平成4年12月10日判決(平成4年(ネ)869号)

主文(抄)「1控訴人と被控訴人らとの間において、原判決別紙物件目録記載の土地のうち、原判決別紙図面記載のイ・チ・ホ・ヘ・イの各点を順次直線で結ぶ線によって囲まれた範囲内の部分につき控訴人が通行地役権を有することを確認する。」
理由「一前記認定のとおり、○○○○ら11名が、本件土地を共有とし、昭和25年○月○○日に建築線指定の承諾をしたのは、各自の居宅敷地が沿接する本件土地を公道に通じる通路として確保するため互いに協力したものであり、以来、本件土地は右通路として使用されてきたものである。これによれば、本件土地については、共有者間において、本件土地を互いの通路として使用する旨の合意があったことは明らかである。
この合意は、本件土地が共有状態のままである限りは、共有者はその持分に基づいてこれを使用することができるのであるから、差し当たっては、共有物の利用方法を定めたものとして意味をもつことになる。しかし、本件土地が分割されることになった場合でも、沿接所有地のための通路として確保する必要性が共有者間で当然になくなるわけではないので、他に特段の事情があったことが認められない当時の状況下においては、右共有者の合意は、将来本件土地が分割される場合には、沿接所有地のために互いに利用を必要とする限度で、各自に分割帰属する部分につきいわば潜在的に通行地役権を設定する趣旨をも含んでいたものと認めるのが相当である。一般に、隣接する土地の所有者が互いにその土地の一部を拠出して私道を開設し、公道までの通行の用に供する場合には、特段の事情のない限り、互いの拠出部分につき通行地役権を設定したものと認めるのが当事者の合理的意思に合致するところ、本件の右合意についても、本件土地を分割すると、相互の通行を認め合うこととしたそれまでの法律関係が消滅すると解するのは不合理である。
もっとも、本件土地については、建築基準法42条1項5号による道路位置指定があり、本件土地が分割されても、この指定が廃止されない限り、控訴人が本件土地を通路として使用することは妨げられない。しかし、本件土地が分割された場合には、関係法令(東京都建築基準法施行細則等)の規定及びその運用上、共有者の一人に分割帰属した部分に対する道路位置指定の廃止について、当該部分を通行する他の共有者の承諾が当然に要件となるかどうか必ずしも定かでなく、右他の共有者の利益が損なわれることがあり得るので、道路位置指定の公法上の規制があるからといって、共有者間に分割を前提とする通行のための私法上の権利関係が成立することを否定することはできない。
二右のとおり、本件土地については、○○○○ら11名の共有者の合意により、分割時には各自の沿接所有地のために通行地役権が発生するとされていたものと認められる。この通行地役権は、本件土地の共有関係が継続している間はいわば潜在化しており、分割により共有関係が解消することによって顕在化するに至るものであるが、民法281条の趣旨に照らし、要役地たるべき沿接所有地の所有権に付従して移転し、沿接所有地の移転につき登記を具えることにより対抗要件を充たすものと解するのが相当である。そして、控訴人及び被控訴人らがそれぞれ本件土地の共有持分とともに沿接所有地を取得し、その登記を経ていることは弁論の全趣旨から明らかである。
したがって、本件の分割により、右通行地役権は顕在化し、控訴人は、本件隣地の利用に必要な限度において、被控訴人らに分割帰属する部分につき通行地役権を取得するものと認めるべきである。」

抵当権の処理

次のようなケースで、抵当権の処理はどのようになるのでしょうか?

  1. AとBの共有である1筆の土地につき、Bの持分についてBの債権者Xの抵当権が設定されていた。
  2. 現物分割を行って、A土地(Aの持分とBの持分)とB土地(Aの持分とBの持分)に分筆し、A土地はAの単独所有、B土地はBの単独所有となった。
  3. XはBに対し、XのBに対する抵当権は、BがAから取得したB土地の元A持分に集中したと主張し、同持分に抵当権設定登記手続を求めた。

上記のような事案において、東京地裁平成21年6月17日判決は、新たな抵当権設定の合意がない限り、抵当権設定者が現物分割により取得した部分に抵当権が集中するということはできないとしています。
すなわち、Aが取得したA土地の元B持分に、未だ、Xの抵当権がついているということであり、AはXに対し、その抵当権の抹消を求めることができないということです。
共有物分割に際して、第三者の権利が設定されている場合にはその処理につき注意してください。
ただし、大阪地裁平成4年4月24日判決は、抵当権は原則として抵当権設定者である共有者の分割後取得部分に集中しないが、特別事情により右取得部分に集中するとしています。

東京地裁平成21年6月17日判決(平成19年(ワ)21925号)

「共有は各共有者がそれぞれ共有物の持分を有している法律関係にあることや、共有物の分割における共有者の担保責任を定めた民法261条の法意に照らすと、共有物の現物分割の効力は、共有者間における共有物の持分の移転であると解される。そうすると、分割前に共有者の1人がその持分の上に抵当権を設定している場合に、その共有物について現物分割がされ、共有者間において持分の移転が生じたとしても、抵当権は同持分について存在するのであり(抵当権が混同により消滅するか否かは、共有物分割とは異なる法律関係によって生じるものであって、もとより別論である。)、仮に抵当権者が共有物分割に参加し、あるいは抵当権者が共有者として共有物分割に関与していたとしても、新たな抵当権設定の合意がない限り、抵当権設定者が現物分割により取得した部分に抵当権が集中するということはできないと解するのが相当である。」
控訴審の東京高裁平成21年11月28日判決(平成21年(ネ)第3844号)もこれを支持しました。

大阪地裁平成4年4月24日判決(平成3年(ワ)9108号)

「共有は各共有者が共有物の全部について持分権を有している関係にあること、並びに、各共有者は他の共有者分割によって取得した部分について、その持分に応じ、売主と同じ担保責任を負担するとしている民法261条の法意に照らすと、その共有関係を終了させるための現物分割がなされたときは、それが共有者間の協議によるものであれ、共有物分割の裁判によるものであれ、共有物分割の効力としては、各共有者はそれぞれ分割によって取得する部分について、持分譲渡を受け、それにより、各自が分割によって取得した部分につき独立した所有権を取得するものであり、遺産分割による共有関係の終了のように遡及効についての条文(民法909条)がない以上、共有物分割の効果は遡及するものではないと解される。
そうすると、分割前に共有者の一人がその持分の上に担保権を設定しているときは、その共有物について分割がなされても、その設定された担保権は依然として持分の割合において共有物全部の上に存在するものというべく、従って、担保権を設定した持分権者か共有物の一部を取得したときは、その者が取得した部分及び他の共有者の取得した部分の全てについて、担保権設定の持分割合に応じての持分権がなお存続し、その持分につき担保権が存在するのであり、たとえ、担保権者がその分割協議に参加し、分割訴訟に補助参加したとしても、担保権者の承諾がないかぎり、担保権設定者が現物分割により取得した部分に担保権が集中すると解することはできないといわなければならない。」
「右認定事実よりすれば、本件抵当権の設定にあたっては、○○はもとより○○も、その設定の対象である共有地につき本件共有物分割訴訟が係属し、同訴訟は既に二十数回に及ぶ弁論期日が重ねられ、○○と他の当事者との間の対立が容易に和解で解決できる状態になく、早晩分割の裁判がなされることを承知していたし、また、共有地について仮換地指定があり、当時の共有地及び仮換地の土地の現況についても知悉していたと認められること、並びに、右抵当権の設定が本件共有物分割訴訟の判決による分割の効果を実施的に害する目的でなされたものとまで認めることはできないこと、等からすると、○○も○○も、従前地である共有地について有する○○の持分権そのものというよりは、右分割訴訟の判決の結果、○○に分割される土地部分に重大な関心があり究極的には○○とともに右分害訴訟の結果に服することを前提として、右判決により○○の分割による取得部分が確定したときには本件抵当権もその部分に集中することを黙示の条件として本件抵当権設定契約に及んだものと見るのが相当である。」

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

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