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共有物分割の裁判手続
裁判により共有物を分割することもできる
民法258条1項では「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」と規定されています。協議により分割できない場合、共有者は裁判所に訴訟を提起して共有物の分割を請求することができるのです。
裁判管轄
どこの裁判所で裁判が行われるかという問題です。
- 原則として、被告となる他の共有者の住所地を管轄する裁判所です(民事訴訟法3条の2、4条)。被告が複数である場合、共同訴訟として同じ訴訟で訴えることになります(同法38条)。
- 分割の対象が不動産である場合、不動産の所在地の裁判所にも管轄があります(同法5条12号)。
- 訴額が140万円を超えない場合には簡易裁判所の管轄ですが(裁判所法33条1項)、分割の対象が不動産である場合、地方裁判所にも管轄があります(同法24条1項)。
〔具体例〕
例えば、A(大阪在住)、B(名古屋在住)およびC(東京在住)の3人が、京都の土地を共有している場合で説明します。Aが、BとCを被告として共有物分割請求訴訟を提起する裁判所は、Bの住所地を管轄する名古屋地方裁判所、Cの住所地を管轄する東京地方裁判所、更に、土地の所在地を管轄する京都地方裁判所のいずれかとなります。
訴額及び手数料
訴額とは、訴訟の目的の価額、すなわち訴訟物の価額であり、訴え提起において裁判所に納付すべき手数料の額の算出の基礎となります(民事訴訟費用等に関する法律4条1項)。
共有物分割請求訴訟の訴額については、「分割前の目的物に対して原告が有する共有持分の価額の3分の1の額」とされています。
不動産については固定資産評価額となりますが、土地については、現時点では、固定資産評価の2分の1となります。
〔具体例〕
例えば、AとBが土地と建物を各2分の1の割合で共有しており、土地の固定資産評価額が6000万円、建物の固定資産評価額が1500万円の場合で説明します。訴額は、土地(6000万円×1/2)+建物(1500万円)=4500万円の1/2(Aの持分)×1/3である750万円となります。これに対する裁判所の手数料(印紙代)は4万円です。
固有必要的共同訴訟
共有物分割請求訴訟は、各人につき判決がバラバラになることは許されず、合一に確定される必要があります。この場合、全員が訴訟の当事者となる必要があり、固有必要的共同訴訟と呼ばれています。
共有者全員が当事者とされていない訴訟は固有必要的共同訴訟の要件を欠き却下されますので注意してください(東京地裁平成18年4月27日判決(平成17年(ワ)11811号)、東京地裁平成14年10月2日判決(平成14年(ワ)11145号))。
〔具体例〕
例えば、A、BおよびCの3人で共有している土地について、Aが共有物分割訴訟を提起する場合、Cのみを被告として訴訟を提起することは許されません。
BとCの両名を被告として訴訟を提起するか、AとBが原告としてCを被告として訴訟を提起する必要があります。
代位行使
共有者の債権者は、債権者代位(民法423条)により、共有物分割請求権を行使することができるのでしょうか?
例えば、XがAに対し貸金請求権を有しているところ、AとBの共有土地がある場合、XはAに代位してBに対し共有物分割請求を行うことができるのかにつき、これを認めた裁判例もあります(東京地裁平成25年2月8日判決)。
東京地裁平成25年2月8日判決(平成21年(ワ)43960号)
判決は、債権者代位による共有物分割請求を認め、分割方法としては全面的価格賠償により、原告に対する支払いを命じました。」
主文「1 別紙物件目録記載の建物を次のとおり分割する。
(1) 被告公益財団法人Y1が,本判決確定の日から6か月以内に,原告に対し8億1500万円を支払ったときは、別紙物件目録記載の建物を同被告の単独所有とする。
(2) 被告公益財団法人Y1が上記(1)の支払をしないときは、別紙物件目録記載の建物を競売に付し、その売得金から競売手続費用を控除した金額を、被告Y2に4分の1、被告公益財団法人Y1に4分の3の割合で分割する。」
「(共有物分割請求権の代位行使の可否)について
(1) 前記前提事実によれば、原告は、平成19年○月○日の判決により、被告に対し627億○○○○万○○○○円の支払を求める請求を認容されているところ、本件訴訟が提起された平成21年○月○日の段階においても、未だ626億○○○○万○○○○円にも上る債権(本件債権)を有していることが認められ、かかる本件債権の金額と、本件全証拠によっても被告Y2に本件債権の弁済に充てることのできる積極財産を有しているとは認められない(なお、被告Y2は、自身が無資力でないことについて積極的な反論を行っていない。)ことからすれば、被告Y2は無資力であることが認められる。
また、原告と被告Y1との間では、被告Y1と被告Y2が本件建物を共有しており、共有物分割請求権を有することについては争いがないところ、かかる共有物分割請求権は、価格賠償請求権等に転化する前であっても、債務者の一身に専属する権利ではなく、代位行使の目的たり得るものといえる。
被告Y2及び被告Y3は、本件不分割特約が現在もなお効力を有している旨主張するが、民法256条1項ただし書及び同条2項の規定に照らしても、被告Y1、A及びH株式会社との間で昭和44年○月○日に成立した本件即決和解の中で合意された本件不分割特約が、被告Y1と被告Y2との間で現在も効力を有していると解することには疑義がある上、被告Y1は、本件訴訟において、原告による共有物分割請求権の代位行使が、本件不分割特約により許されないとの主張はしていない。こうした事情の下では、本件不分割特約は、原告の代位行使を妨げるものということはできず、本件全証拠によっても、他に原告の代位行使を妨げるような事情は認められない。」
利益相反
多数の者の共有である場合、原告や被告は複数名となります。この場合、弁護士が、複数の原告もしくは複数の被告の代理人となることができるのでしょうか?
例えば、A、BおよびCの共有土地について、X弁護士がAおよびBの代理人としてCに対し訴訟を提起することが許されるのかという問題です。
民法108条で「同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。」とされていますが、「ただし債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りではない。」と規定されています。
したがって、弁護士Xが、AとBの双方から、両名の代理人となることについて同意を得ておれば代理人となることが可能です(東京高裁昭和47年11月24日判決(昭和44年(ネ)1280号))。
ただし、上記事例で、CがAおよびBから持分を買い取ったり、競売で代金を分割するような場合には、AとBの間に実質的な利益相反はないものとを考えられますが、AがBの持分を買い取るというような場合にはAとBの間に実質的に利益相反となりますので、A及びBに対し十二分に説明し、確認する必要があるでしょう。