共有不動産の使用貸借の問題
共有不動産についての使用貸借の設定、解除、明渡しを行うためには、共有者はどのようにすればよいのでしょうか?
共有物の処分・変更と解されるのなら全員の同意が必要(民法251条)、共有物の管理と解されるのなら過半数の同意で決めることができ(民法252条本文)、保存行為と解されるのなら各共有者がすることができます(民法252条ただし書)。
この点についての裁判例をご紹介します。
建物所有を目的とする共有土地の使用貸借
東京地裁平成18年1月26日判決・金融商事判例1237号47頁
本件使用貸借契約の効力について
- 原告は、本件使用貸借契約による本件土地の使用借権の設定は共有物の管理行為に当たるところ、本件土地につき過半数である10分の6の持分を有するAから本件土地の使用借権の設定を受けたから、本件使用貸借契約は有効である旨主張する。
- しかしながら、前記認定のとおり、原告とAとの間で締結された本件使用貸借契約は、返還時期の定めがない上、本件建物の敷地として本件土地を使用するにとどまらず、本件建物を解体撤去して新たに建築する建物の敷地として本件土地を使用する目的をも含むものであり、しかも、原告が新築を予定しているのは鉄骨鉄筋コンクリート造の堅固な建物であるから、民法602条2号所定の5年を優に超える相当長期間にわたり存続使用させる結果となること、加えて、使用貸借であるから、賃貸借と異なり対価なく無償で使用させるものであること等の事情を考慮すると、原告とAとの間の本件使用貸借契約の締結は、共有者である被告の本件土地に対する使用収益権能を著しく制限するものであって、共有物である本件土地の管理行為とはいえず、その処分行為に該当すると認めるのが相当である。
- そうすると、本件使用貸借契約の締結は、Aが本件土地についての管理行為としてなし得ることではなく、共有者全員の同意を要するというべきところ、前記認定のとおり、本件使用貸借契約の締結について、Aは、本件土地の共有者である被告の同意を得ていないのであるから、本件使用貸借契約は、無効といわざるを得ない(原告がAとの間で本件使用貸借契約を締結した趣旨目的等に照らすと、原告は、民法602条2号所定の5年の期間では本件使用貸借契約を締結しなかったものと推認されるから、一部無効の法理により本件使用貸借契約を5年の期間に短縮してその効力を認めることもできない。)。
この点について、原告は、本件使用貸借契約は全く無関係の第三者に使用収益させる目的のものではなく原告の母親であるAが息子である原告と同居するための建物所有を目的として締結されたものであり、特別の事情があるから、本件使用貸借契約の締結は、管理行為に当たる旨主張するが、原告の主張するような事情をもってしても、本件使用貸借契約の締結が管理行為に当たるとまでは認められないから、原告の主張は、採用することができない。
使用貸借契約の解除
最高裁昭和29年3月12日判決・民集8巻3号696頁
共同相続人の一人が、相続財産たる家屋の使用借主である場合、他の共同相続人においてなす右使用貸借の解除は、民法第252条本文の管理行為にあたるとされました。
使用貸借契約解除後の明渡し請求の不可分性
最高裁昭和42年8月25日判決・民集21巻7号1740頁
使用貸借契約の終了を原因とする家屋明渡請求権は性質上の不可分給付を求める権利と解すべきであって、貸主が数名あるときは、各貸主は総貸主のため家屋全部の明渡を請求することができるとされました。