数量指示売買
数量指示売買とは、「当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買」のことです(最高裁判決昭和43年8月20日判決)。
改正民法では、特定物売買であるか不特定物売買であるかを問わず、売主は種類、品質及び数量に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す債務を負うことを前提に、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合には、買主は、救済手段として、①その修補や代替物の引渡し等の履行の追完の請求(改正後民法562条1項本文)、②代金減額の請求(563条1項、2項)、③損害賠償の請求(564条)、④契約の解除(564条)をすることができるとされました。
代金減額の請求については、買主が売主に対して相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときには、買主はその不適合の程度に応じて代金減額請求をすることができるとされています(改正民法563条1項)。ただし、次の場合には、売主に履行の追完の機会を与える必要がないことから、買主は催告をせずに代金減額請求をすることができます(同条2項)。
- 履行の追完が不能であるとき。
- 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
- 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
- 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
また、権利行使の期間制限につき、改正民法では、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合における買主の権利についてのみ期間制限を設け、引き渡された目的物が数量に関して契約の内容に適合しない場合や移転した権利が契約の内容に適合しない場合については、期間制限は設けられていません(改正民法566条本文)。ただし、商行為においては特則があります(商法526条)。
不動産売買においては数量指示売買か否かは微妙であり、目的物を面積で表示しただけであれば当然には数量指示売買とはされません。最高裁判決昭和43年8月20日判決が判示するように、①当事者において数量を確保する意思があったこと、②契約において表示されていること、③この数量を基礎として代金額が定められたこと、が必要なのです。
土地売買について数量指示売買として争われた事例
土地売買について数量指示売買が争われた最高裁判決がありますので参考にしてください。
最高裁昭和57年1月21日判決・民集36巻1号71頁
土地の売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示された場合でも、その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、売主は、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、その損害を賠償すべき責めを負わないものと解するのが相当である。
最高裁平成13年11月22日判決・判タ1083号117頁
本件売買契約においては本件土地が公簿面積どおりの実測面積を有することが表示され、実測面積を基礎として代金額が定められたものであるから、本件売買契約は、数量指示売買に当たり、買主は、売主に対し、民法565条、563条1項に基づいて、代金減額請求をすることができる。
最高裁平成13年11月27日判決・民集55巻6号1380頁
数量指示売買において数量が超過する場合に、売主が代金の増額を請求することはできない。