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離婚と共有物分割

既に婚姻関係が破綻している夫婦の共有不動産の分割については離婚における財産分与において処理されるべきことが原則であると思われますが、共有物分割請求訴訟が提起されることもあります。
この場合、婚姻関係継続中であるにもかかわらず、相手方は、自宅からの立退きを迫られることから、殊更、紛争性が高くなります。
裁判例では、権利濫用に当たらないとしたもの、権利濫用に当たるとして棄却したもの、財産分与で解決すべきとしたものなどがあります。

東京地裁平成27年7月2日判決(平成25年(ワ)32529号)

離婚訴訟中における共有物分割請求の事案で、原告の分割請求が権利の濫用とは言えないとし、原告に本件建物を取得させる全面的価格賠償の方法による分割を認めました。
「2争点1(原告の分割請求が権利の濫用といえるか)について
(1)本件建物につき原告及び被告は、原告の持分5分の4、被告の持分5分の1で共有し、原告が被告に対して本件建物の分割を請求したものの協議が調わないことは当事者間に争いがない。
この点、被告は、原告の分割請求が権利の濫用である旨主張するところ、共有物分割請求権は、共有者に原則的所有形態である単独所有への移行を可能にする共有の本質的属性による権利であるが、当該分割請求が権利の濫用に当たる場合にはその権利行使が許されないことになるのであり、権利の濫用に当たるか否かは、共有物分割が実現されることによって原告の受ける利益と被告の被る不利益等の客観的事情のほか、分割を求める原告の意図とこれを拒む被告の意図等の主観的事情をも考慮して決すべきものである(最高裁判所平成4年(オ)第1013号同7年3月28日第三小法廷判決・裁判集民事174号903項参照)。
(2)原告が希望する全面的価格賠償が実現されれば、本件土地と併せて本件建物の所有権が原告に帰属する利益がある。
一方、被告は、本件建物に居住しており、事務所も開設していることからすれば、全面的価格賠償が実現されて所有権が原告に帰属すれば、生活の本拠を失う可能性がある。
しかしながら、前記認定事実のとおり、原告は、現在無職であり17万円程度の賃料収入がある一方で、本件建物にかかる税金等の費用年間約100万円をすべて負担していることや、本件土地は原告が所有していること、本件建物についても持分を5分の4保有し、被告の持分5分の1についても実質的には原告の父親が負担したものであること、被告に対して離婚の意思を示し離婚訴訟を提起していること、離婚訴訟自体も離婚事由も皆無とはいえないこと、被告は離婚したとしても仕事が続けられる限り本件建物に留まりたいと供述していること等の事情からすれば、原告において居住場所がないなど切迫した事情が認められないとしても、原告が共有者の権利として、本件建物を分割してその帰属を自身に求め、その上で本件建物と本件土地の処遇を考えたいと希望することも無理からぬものと考えられる。
この点、被告は、原告の分割請求が認められれば、生活の本拠を失い、また、○○も立ちゆかなくなる旨主張するが、近隣には家族が居住しており、一時的にではあっても家族の元に居住することは可能であると考えられるし、また、○○は、営業と修理が主たる仕事内容であるところ、営業内容は主に定期的に顧問先を訪問することであり、また、修理も外注に出すのであるから、必ずしも事務所として本件建物が必要不可欠とまではいえないし、顧客は前職時代の顧客がほとんどであるのであるから(被告本人)、事務所を移転したとしても直ちに信頼が失われたりするわけではない。
また、被告は尋問において、事務所を移転することで現在提携先との間で締結している自動車ローン提携契約の継続が不可能になる旨供述するが、具体的に提携先に確認しているわけではない。
以上の事情を総合すれば、原告の本件分割請求が権利の濫用であって同権利の行使が許されないとまで認めることはできない。」

東京高裁平成26年8月21日判決(平成26年(ネ)2614号)

共有物分割請求が権利の濫用であるとしました。
「3権利濫用の成否の判断(1)民法258条に基づく共有者の他の共有者に対する共有物分割権の行使が権利の濫用に当たるか否かは、当該共有関係の目的、性質、当該共有者間の身分関係及び権利義務関係等を考察した上、共有物分割権の行使が実現されることによって行使者が受ける利益と行使される者が受ける不利益等の客観的事情のほか、共有物分割を求める者の意図とこれを拒む者の意図等の主観的事情をも考慮して判断するのが相当であり(最高裁判所平成7年3月28日第三小法廷判決・裁判集民事174号903頁参照)、これらの諸事情を総合考慮して、その共有物分割権の行使の実現が著しく不合理であり、行使される者にとって甚だ酷であると認められる場合には権利濫用として許されないと解するのが相当である。
(2)以上の観点により本件を検討すると、控訴人が共有物分割を請求する本件建物は、控訴人と被控訴人の夫婦がその婚姻中に夫婦の共同生活及び子らの監護養育の本拠となる自宅として共同で建築し、控訴人と被控訴人の共有名義で所有権保存登記がされて所有権を取得したもので、夫婦の婚姻中に形成された夫婦の実質的共有財産に該当するものであり、現に被控訴人が自宅として子らと居住してきているのであって、将来、控訴人と被控訴人との離婚の場合には、夫婦の共有財産に係る財産分与の対象とされて分与の方法等を当事者間で協議し、その協議が整わないときに裁判所による協議に代わる処分として分与の方法等が定められるべきものである(民法768条1項、2項)。
そもそも、控訴人は離婚調停を申し立てたが、同調停が係属していて離婚は成立しておらず、現に控訴人と被控訴人との婚姻関係は継続しているのであるから、本来、控訴人には、配偶者である被控訴人に対して同居・協力・扶助の義務(民法752条)を負担しており、その義務の一環として被控訴人及び子らの居所を確保することも控訴人の義務に属するものというべきであり、控訴人は被控訴人が本件建物を住居として継続して使用することを許容すべきであると解される。
しかるに、控訴人は、本件建物から転居して別居を開始し、被控訴人を相手方とする離婚調停手続と平行して本件建物の共有物分割請求及び本件建物の明渡しの請求をするに至ったものである。被控訴人は、これによる心痛によって精神疾患に罹患して現在通院せざるを得ない負担を負い、また過重の労働をしながら子らと3人で本件建物に居住することによってようやく現在の家計を維持している状況にある。
上記の民法752条所定の義務に基づく配偶者に対する居所の確保義務に加えて、控訴人は、被控訴人との間で、子らが27歳に達する平成43年まで被控訴人が無償で本件建物に居住することを合意しており、更に控訴人と被控訴人との間で成立した婚姻費用分担調停における調停条項において、婚姻解消するまでの間、被控訴人が本件建物に無償で居住することを前提として控訴人が被控訴人に対して支払う婚姻費用分担額が定められ、控訴人が本件建物の住宅ローン及び水道光熱費等を引き続き負担することを確認する合意がされているのであって、控訴人による婚姻解消前の本件建物の共有物分割請求及び本件建物の明渡しの請求は、上記の各合意の履行とは相反し、これを覆すものといわざるを得ない。
さらに、被控訴人と子らは、本件建物を家庭生活の本拠として継続して生活し、本件建物は就学時期にある子らの通学及び通院の拠点となり、本件建物を本拠とする被控訴人の子らに対する良好な監護養育環境が整っているにもかかわらず、被控訴人との離婚協議が整わないまま控訴人の本件建物の共有分割請求及び本件建物の明渡しの請求が実現され、被控訴人と子らが被控訴人による監護養育の現状の継続を望むときは子らと共に退去を余儀なくされるとすれば、被控訴人及び子らの生活環境を根本から覆し、また、現在の家計の維持を困難とすることになるのであって、被控訴人及び子らが被る不利益は大きいものといわざるを得ない。
他方、控訴人は、現在もその生活状況に格段の支障はなく、本件全証拠によっても、本件建物の共有物分割請求を実現しないと控訴人の生活が困窮することは認めることができない。
これらの事情に加えて、認定事実によれば、控訴人は有責配偶者であると認められ(この認定に反する的確な証拠はない。)、有責配偶者である控訴人の請求によって離婚前に夫婦の共有財産に該当する本件建物に係る共有物分割を実現させて控訴人の単独所有として被控訴人に本件建物の明渡しを命じ、離婚に際しての財産分与による夫婦の共有財産の清算、離婚後の扶養及び離婚に伴う慰謝料等と分離し、これらの処分に先行して十分な財産的手当のないままに被控訴人及び子らの生活の本拠を失わせ、生計をより困難に至らしめることは、正義・公平の理念に反し、また、有責配偶者からの離婚請求が許される場合を限定して解すべき趣旨に悖るというべきである。
以上に説示した本件建物に係る共有関係の目的、性質、控訴人と被控訴人の身分関係及び権利義務関係等を考察し、控訴人と被控訴人のそれぞれに係る客観的、主観的事情を総合考慮すれば、控訴人の被控訴人に対する本件建物に係る共有物分割等の請求は、著しく不合理であり、妻である被控訴人にとって甚だ酷であるといわざるを得ないから、権利濫用に当たり許されないと解するのが相当である。
(3)控訴人本人は、原審において、このままでは控訴人の生活が成り立たなくなり、控訴人が早晩経済的に破綻するのは必至である旨供述記載するが、具体性に欠け、これを裏付ける証拠もなく、採用することができない。また、控訴人本人は、本件建物に同居中に受けた被控訴人の嫌がらせに精神的に参り平成24年1月頃から片側顔面麻痺に罹患したとも供述記載するが、上記と同様に裏付ける証拠もなく、採用することができない。
なお、控訴人は、本件建物の敷地の所有者である○○は被控訴人が本件建物に居住し続けることを断固として拒否しており、本件建物収去土地明渡しの請求を予定している旨主張し、○○は、控訴人と被控訴人との離婚が成立し次第、被控訴人に対して本件土地から出て行くことを求める旨を供述記載している。しかし、被控訴人が控訴人との離婚後に本件建物に居住して子らを監護養育している場合に○○が被控訴人に対して本件建物収去又は本件建物退去土地明渡しを請求するとしたときであっても、その請求の当否は、控訴人と被控訴人の離婚に際しての財産分与の方法及び内容、本件土地の使用貸借の目的、その使用及び収益をするのに足りる期間の経過の有無等の事情を考慮して使用貸借契約の終了の有無あるいは当該請求の権利濫用該当性の有無などとして本件とは別に判断されるべきものであって、上記○○の現在の主観は、上記の当裁判所の判断を左右するものではない。
(4)控訴人は、当審においても原審と重ねて縷々主張するが、上記の当裁判所の認定判断を左右するに足りず、他にこの認定判断を左右するに足りる的確な証拠はない。」

東京地裁平成20年11月18日判決(平成20年(ワ)17730号)

被告の「夫婦共同財産についての清算は、財産分与の審判の申立て又は人事訴訟手続によるものであって、夫婦が共有持分を有する共有財産がある場合にも共有物分割請求訴訟を提起することは許されない」との主張に対し、中間判決で「本件の共有物分割請求は適法であり、本件建物の所在地を管轄する裁判所である当裁判所は裁判管轄を有するというべきである。」としました。

東京地裁平成20年1月31日判決(平成18年(ワ)19645号)

離婚後の共有物分割請求につき権利濫用には当たらないとしました。
「1争点1(共有関係の解消方法)について原告X2と被告の本件建物についての共有持分が、夫婦の実質的共有財産であっても、民法上の共有である以上、共有持分権の権利行使の一態様である共有物分割請求権の行使について、制限されるものとは解されないから、この共有関係の解消について、財産分与手続によるものであるとする被告の主張は失当である。
まして、本件建物の共有者には、婚姻関係にない原告X1が含まれているのであり、原告X1については財産分与手続で共有関係を解消することはできず、共有物分割請求によって共有関係を解消できるのであるから、この点からも被告の主張は失当である。
被告は、原告X1が本件建物について共有持分を取得するに至った経緯から、財産分与手続を優先して差し支えない旨主張するが、原告X2と被告は離婚している上、前記経緯が婚姻関係にない原告X1の共有物分割請求権を制限する理由とは解されないので、理由がない。
「2争点2(権利濫用)について被告が離婚を求める調停を自ら申し立てながら、出頭しなかったことから、この調停は終了することになったこと、被告は、本件審判で婚姻費用の支払いを命じられたにもかかわらず、これに応じず、差押えされたこと、原告X2と被告とでは、収入の面で差があり、被告が原告X2より多額の収入を得ていること等を考慮すると、原告らの本件共有物分割請求が権利濫用であるとは認められない。」

東京地裁平成18年3月3日判決(平成17年(ワ)18796号)

次のように述べて共有物分割請求を却下しました。
「(2)ところで、民法は、夫婦財産契約のない夫婦の場合、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とし、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する、といわゆる夫婦別産制を定める(同法762条)とともに、夫婦は、同居し、互いに協力し扶助しなければならない、とし(同法752条)、これは夫婦が共同生活を営んでいくための本質的な義務と解されている。
また、夫婦財産の清算については、離婚に伴う財産分与によって(なお、夫婦の一方が死亡したことにより夫婦関係が消滅した場合には相続によって)、実現を図ることが予定されている(民法768条、771条)。
夫婦別産制によれば、一般に、婚姻期間中であっても、自己の特有財産について処分することは自由であり、また、共有に属する不動産については、いわば共有持分の処分の一方法として、分割協議が調わない場合には、競売を申し立て、これによる売得金を持分に応じて分割することも肯定され、これは、共有に属する不動産が、夫婦ないし家庭の住居として使用されていたり、共有持分を有する者が夫婦であったりした場合にも、特に異なった解釈を施す必要は認めがたいことになろう。
しかし、民法は、他方で、前記のとおり、婚姻中の夫婦につき、相互に同居・協力・扶助という本質的な義務を有するものとしており、更に、婚姻関係が破綻していると認められる場合には、夫婦財産の清算として離婚に伴う財産分与を求める手続が準備され、家庭裁判所が、財産分与につき、協議に代わる処分をする場合には、当事者双方がその協力に得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める(民法768条3項)として、扶養的要素の考慮を含め、全体的、形成的な判断による解決を予定しているのであるから、これらを整合的に解釈すると、夫婦財産の別産制を前提としつつ、前記の観点から、一定の場合に、一定の分割方法が、一定の期間制約を受けることがあることも織り込まれており、これが法の趣旨であるというべきである。」
「(3)以上に基づき本件について検討する。ウこのように、本件では、法の本来予定する離婚及びこれに伴う財産分与等に関する手続において解決を図ることが可能な状態となっているものということができ、仮に原告と被告Y1との間に協議が調わないとしても、人事訴訟の提起があれば(なお、離婚成立後の家事審判法9条1項乙類5号の審判もありうる。)、離婚及び財産分与等を含め家庭裁判所の判断が得られ、この場合、家庭裁判所は、財産分与について、本件建物だけではなく、原告と被告Y1が共有している他の財産の有無ないしその扱いを含め、分与の額及び方法を全体的、形成的に判断することを通じ、適切な解決が見込まれる。
エそうとすれば、被告Y1又は原告の家事調停の申し立て及びその推移を見守り、少なくともその結果が出るまでの間は、競売による売得金を配分するという分割方法については制約を受け、これに反する本件訴えは前記の法の趣旨に反し、適法性を欠くものと解するのが相当である。
このように解した場合、原告において、その持分を換価する時期が遅れるおそれがあるが、家事調停において本件建物の扱いにつき合意が成立する可能性もあるうえ、制約を受けるのは競売を通じた分割方法に限られるのであるから、一定期間に限り、このような不利益を被ることはやむを得ないものである。」

東京地裁平成17年10月28日判決(平成17年(ワ)6195号)

次のように述べて共有物分割請求は権利の濫用に当たるとしました。
「(1)本件不動産は、原告と被告の婚姻生活のために生活の本拠とする自宅として購入したものであることは、原告が本件不動産を出るまで原被告が本件不動産に同居していたことから明らかであり、特段の事情がない限り、原被告には本件不動産における同居義務があるというべきである。原告は、実質的に被告が単独で購入したものである旨主張するが、そうであるとすれば、原告がローンを負担する必要はないのであって、採用することができない。
原告は、居住しておらず、今後も居住する意思のない本件不動産のためにローンを負担し続けることは、全く不合理なことである旨主張するが、原告が本件不動産に居住していないことは同居義務の不履行にほかならず、かつ、被告が原告を本件不動産から追い出した等、同居しないことがやむを得ないと認められるような事情も特に存在しない。
(2)かつ、原被告間には離婚訴訟が係属しており、本件不動産のような夫婦共同生活の基礎となるべき財産については、離婚訴訟の中で、他の事情と総合して帰趨を定めるのが合理的であり、ことさら本件不動産の共有関係の解消を先行させなければならない理由はない。
(3)原告は、共有物分割請求権は、単独所有を原則とする近代的所有権の本質に発するものであるから、安易な制約は認められない旨主張するが、本件不動産のように、夫婦共同生活の基礎として共有者双方が出捐して購入した財産は、組合財産類似の性格を有することも否定できず、このような個別事情を斟酌することまでもが禁じられるものではない。
(4)以上の事情を総合すれば、原告の共有物分割請求は、現時点においては権利の濫用に当たり許されないものというべきである。」

大阪高裁平成17年6月9日判決(平成17年(ネ)279号)

「四権利の濫用の主張の当否について(1)民法256条の規定する共有物分割請求権は、各共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的効用を十分に発揮させるため、近代市民社会における原則的所有形態である単独所有への移行を可能にするものであり、共有の本質的属性として、持分権の処分の自由とともに、十分尊重に値する財産上の権利である(最高裁判所大法廷昭和62年4月22日判決・民集41巻3号408頁参照)。
しかし、各共有者の分割の自由を貫徹させることが当該共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、分割請求権の行使が権利の濫用に当たると認めるべき場合があることはいうまでもない。
(2)以上の観点に立って本件について、被控訴人の分割請求権の行使が権利の濫用に当たるか否かについて検討する。
控訴人が指摘するとおり、本件不動産は、被控訴人が控訴人との婚姻後に取得した夫婦の実質的共有財産であり、しかも現実に自宅として夫婦及びその間の子らが居住してきた住宅であり、現状においては被控訴人が別居しているとはいえ、控訴人及び長女春子が現に居住し続けているものであるから、本来は、離婚の際の財産分与手続にその処理が委ねられるべきであり、仮に、同手続に委ねられた場合には、他の実質的共有財産と併せてその帰趨が決せられることになり、前記認定に係る、資産状況及び控訴人の現状からすると、本件不動産については、控訴人が単独で取得することになる可能性も高いと考えられるが、これを共有物分割手続で処理する限りは、そのような選択の余地はなく、被控訴人が共有物分割請求という形式を選択すること自体、控訴人による本件不動産の単独取得の可能性を奪うことになる。
そして、前記認定のとおり、被控訴人は、離婚調停の申立て自体は経由しているものの、いまだ離婚訴訟の提起すらしておらず、現に夫婦関係が継続しているのであるから、本来、被控訴人には、同居・協力・扶助の義務(民法752条)があり、その一環として、控訴人及び病気の長女○○の居所を確保することも被控訴人の義務に属するものというべきである。ところが、被控訴人は、病気のために収入が減少傾向にあるとはいうものの、依然として相当額の収入を得ているにもかかわらず、これらの義務を一方的に放棄して、控訴人や精神疾患に罹患した長女の○○をいわば置き去りにするようにして別居した上、これまで婚姻費用の分担すらほとんど行わず、婚姻費用分担の調停成立後も平成16年9月以降は、月額わずか3万円という少額しか支払わないなど、控訴人を苦境に陥れており、その結果、控訴人は、経済的に困窮した状況で、しかも自らも体調が不調であるにもかかわらず、一人で○○の看護に当たることを余儀なくされている。その上、本件の分割請求が認められ、本件不動産が競売に付されると、控訴人や○○は、本件不動産からの退去を余儀なくされ、○○の病状を悪化させる可能性があるほか、本件不動産には前記認定のように抵当権が設定されているため、分割時にその清算をすることになり、控訴人と○○の住居を確保した上で、2人の生計を維持できるほどの分割金が得られるわけでもないし、控訴人は、既に満60歳を過ぎた女性であり、しかも○○病や神経症のため通院治療を受けていて、今後、稼働して満足な収入を得ることは困難であるから、経済的にも控訴人は一層苦境に陥ることになる。
これに対し、被控訴人は、現在、進行した○○○○に罹患し、その治療などのため、収入が減少傾向にあり、借入金の返済が徐々に困難になっていることから、余命を考慮して、負債を整理するため、本件不動産の分割請求をしているものである旨主張している。
被控訴人の病状からして、上記のような考えを持つこと自体は理解できないでもないが、前記認定事実によっても、その主張自体からも、現時点で、金融機関から競売の申立てを受けているわけでもなく、直ちに本件不動産を処分しなければならないような経済状態にあるとは認め難いし、仮に、そのような必要があるとしても、事務所不動産を先に売却して、事務所自体は他から賃借することも考えられるのであって、どうしても負債整理のために本件不動産を早期に売却しなければならない理由も認められない。また、上記のような困難な状況にある妻である控訴人や子供らの強い反対を押し切り、控訴人らを苦境に陥れてまで負債整理を行わなければならない必然性も見出し難い。
(3)以上の諸事情を総合勘案すると、被控訴人の分割の自由を貫徹させることは、本件不動産の共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、分割の必要性と分割の結果もたらされる状況との対比からしても、被控訴人の本件共有物分割請求権の行使は、権利の濫用に当たるものというべきである。」

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

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