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分割請求が認められない場合

共有者による共有物分割請求権が認められるべきではないと争われるケースがありますのでご紹介します。

権利濫用を肯定

東京高裁平成25年7月25日判決(平成25年(ネ)2524号)

「イところで、○○に認定判断したとおり、控訴人、被控訴人及び○○の間に、遅くとも東京都品川区○○所在の区分建物につき所有者を被控訴人とする所有権移転登記がされた平成18年○月○日までには、○○の遺産についての分割の協議が調い、控訴人及び被控訴人は、本件建物の持分2分の1ずつを共有取得したと認められるところ、控訴人が、その頃、アパートを賃借し、本件建物から賃借アパートに転居したことに、○○に認定した各事実を総合すれば、控訴人、被控訴人及び○○は、被控訴人はその存命中は本件建物に居住し、公的年金、東京都品川区○○所在の区分建物に係る賃料収入等をもって生計を維持し、他方で、控訴人は、被控訴人とは別居して賃借アパートに居住し、主として生活保護によって生計を維持することを前提として、○○の遺産についての分割の協議をしたものと推認することができる。被控訴人も、控訴人、被控訴人及び○○の間では、本件建物で被控訴人が余生を送ることが当然の前提(共通認識)になっていたと考えている旨陳述するところである。
そうすると、本件建物の競売を命ずる場合には、上記前提を覆すことになるところ、太郎の遺産についての分割の協議が調った平成18年○月当時も現在も、被控訴人は、本件建物に居住し、公的年金、東京都品川区○○所在の区分建物に係る賃料収入等をもって生計を維持しており、他方で、控訴人は、賃借アパートに居住し、主として生活保護によって生計を維持しているから、平成18年○月当時から現在までの間に控訴人及び被控訴人につき重大な事情の変更があったとは認められない。また、控訴人は、本件建物の分割を求める理由として外語専門学校に入通学するための資金取得等を挙げるが、控訴人の生活歴、○○に認定した被控訴人に金銭を要求する際の強迫的言辞その他の被控訴人に対する言動からみて、現時点でも、控訴人に安定した通学、就労等を期待することは困難であるといわざるを得ず、また、控訴人が、外語専門学校への入通学等について、上記前提を覆してまで実現すべき堅固な意思を有しているとも認められない。
ウ以上を総合すれば、控訴人の本件建物の分割の請求は、控訴人、被控訴人及び○○が本件建物を控訴人及び被控訴人の共有取得とする際に前提とした本件建物の使用関係(被控訴人が存命中本件建物を使用すること)を合理的理由なく覆すものであって、権利の濫用に当たるというべきである。」

東京地裁平成19年12月21日判決(平成17年(ワ)3130号)

被告から権利濫用の主張がなされなかったため共有物分割を認めましたが、権利濫用を主張しれおれば認められた可能性のある事案です。
「(1)本件訴訟において、原告らは、本件土地及び本件建物の共有物分割を求めている。本件建物は、現物分割をすることが不可能であるから、その方法は競売を命じて、その売得金を分配するという方法によらざるを得ない。
(2)その場合には、本件土地及び本件建物が第三者の手に渡ることも十分に予想されるところ、そうなった場合は、被告Y1の本件建物における居住は続行不能になるか、少なくともその居住が脅かされることになる。
(3)一方、亡Aは、本件第1遺言において被告Y1の現在の生活環境を維持することを求めており、これを条件として原告X1及び原告亡X2に法定相続分を超える持分を相続させると遺言している。したがって、亡Aは、被告Y1存命中に本件建物及び本件土地を競売にかけるといった事態を全く想定していなかったと認めるのが相当であり、その意味で本件の共有物分割請求は亡Aの遺志に反するものと認められる。
(4)原告らが本件請求に至ったのは、前記○○のように、被告Y1と原告X1及び原告亡X2が対立を深め、容易に修復し難い状態に至ったことを理由としていることは推認できるが、仮にその原因の一端が被告Y1の側にあったとしても、上記のとおり、被告Y1の居住の安定に重大な影響を及ぼしかねない共有物分割を命じることは、被告Y1が大正7年生まれであるという高齢者であることをも考え合わせると躊躇を感じざるを得ない。
(5)しかしながら、権利濫用の抗弁など、上記の点に関する主張がなされない以上、上記の点を考慮してもなお共有物分割請求を認容せざるを得ない。」

東京地裁平成19年1月17日判決(平成17年(ワ)16714号)

「2ところで、共有物分割請求権は、各共有者に原則的所有形態である単独所有への移行を可能ならしめるところの共有の本質的属性による権利であるが、共有者によるその分割請求権の行使が信義誠実に反する場合には、権利の濫用として、その権利行使が許されないことになるのであり、これが権利濫用に当たるか否かは、共有物分割が実現されることによって原告の受ける利益と被告の被る不利益などの客観的事情のほか、原告が分割請求権を行使する主観的な事情をも考慮して決すべきである。
そこで、本件についてこれをみるに、本件不動産は、一体として使用されているものであり、この現物を分割することは相当ではなく、また、被告に全面的価格賠償をさせることも、被告に賠償金の支払能力がないことからも相当ではない(被告は、一旦行った全面的価格賠償の申立てを撤回した。)から、本件不動産の共有物分割方法としては、原告が申し立てるように競売による代金分割の方法以外には考えられないところである。
そして、本件不動産を競売することにより、原告としては、共有物の持分としての評価額が分割により現金化することによる経済的な利益を受けることになるが、現時点において、本件不動産を競売して現金化しなければならない具体的な経済的必要性は見当たらない。一方、被告としては、認知症に罹患している現状において、生活の本拠である本件建物を失い、また、本件建物でCが営業することができなくなって、Cからの給与を得られなくなり、当面の生活費や医療費を賄うことが困難になるという具体的な不利益を被ることが見込まれるのであり、被告の被る不利益は無視できないものというべきである。さらに、原告が、本件の分割請求権を行使する原因として主張するところの、被告の要望でCの経営に参画するようになったDが原告の経営権を奪い、また、Dが、原告から了解を得ることなく、本件建物に居住しているとの点については、まず、Dが、Cの経営に参画するに至った経緯は上記1(6)ないし(8)のとおりであって、Dが、原告が退社した後のCの経営を立て直すなどしたのであり、これをもって、Dが原告の経営権を奪ったと評価することはできず、また、Dが本件建物に居住している経緯は上記1(9)及び(10)のとおりであって、Dは、認知症に罹患した被告の介護とCの経営のために夫婦で本件建物に居住し、かつ、Dが被告の成年後見人に就任しているのであり、D夫婦以外には、当面、被告の介護を行う者がいない現状においては、Dが本件建物に居住することが、原告の意思に反するものであったとしても、これをもって、不当な行為であるということもできない。これに加え、被告は、原告にとって、いわば育ての親に当たるにもかかわらず、原告が、その本人尋問で、本件不動産が競売されると、被告が本件建物を出なければならなくなり、また、当面の生活費や医療費が賄えなくなることについても関心がなく、また、今後も、被告の生活の援助をする意思はない旨供述していることをも勘案すると、原告の共有物分割請求権の行使は、被告に一方的な不利益を及ぼすものであって、かつ、原告の意図は、その競売による経済的な利益を得ることよりも、Cの経営権の所在若しくはDに対する不満あるいはDにCの経営を任せた被告に対する不満を晴らすことにあることが窺われるのであり、これによれば、原告の共有物分割請求権の行使は、信義誠実の原則に反するものであって、権利の濫用として、その権利行使は許されないものというべきである。」

東京地裁平成17年2月24日判決(平成16年(ワ)25306号)

「2当事者双方が競売による分割を望んでおらず、原告の提案する価格賠償は原告が提供可能な賠償額が適正額よりも大幅に低いため、競売による分割も価格賠償も現実的な選択肢ではない。
原告が希望する現物分割案は、分割後の土地利用について、被告Dにその所有する本件建物1の全部又は一部の取り壊しを強要するものである上、原告の再築予定の建物も、その敷地の一部を被告Dの取得する部分とするか、又はその敷地を自己の取得する袋地とした上で、被告らの取得する部分に原告取得地と公道との間の通路としての負担を負わせるものであって、被告らに過当な負担を負わせるものである。
被告らは、本件土地については裁判所の定めた分割の方法に応じる義務を負うが、それ以上の義務(本件建物1の全部又は一部の取り壊し、分割により取得した土地の原告建物敷地としての提供又は原告建物のための通路としての提供)を負うものではなく、また、被告らがこのような負担に応じる見込みもないものである。
そうすると、原告の希望する現物分割後、原告の希望するような土地利用が実現する見込みはなく、かえって、分割後の土地にまつわる権利関係が不安定になることが懸念されるものというべきである。
以上の事情を総合すると、原告の本件土地についての共有物分割請求は、権利の濫用として許されないものと解するのが相当である。」

東京地裁平成8年7月29日判決(平成6年(ワ)23233号)

子の実母に対する不動産の共有物分割請求が権利の濫用に当たり許されないとされました。

東京地裁平成3年8月9日判決(平成2年(ワ)6597号)

共有物分割請求の対象である不動産が共有者らの父又は共有者の夫の遺産であって、
遺産分割協議によって共有持分が決められた際、共有者の1人である被告が本件不動産において余生をおくることを当然の前提として同人の持分割合を法定相続分よりも殊更少なくしたものであること、本件不動産の現物分割は不可能であり、競売による分割を実施するとすれば、同人が住むべき家を失うことになりかねない等判示のような諸事情のもとでは、共有者の共有物分割請求は、権利の濫用に当たり許されないとした。

権利濫用を否定

東京地裁平成28年9月14日判決(平成28年(ワ)6607号)

「2権利濫用の抗弁について被告らは、本件不動産は調停に代わる審判の際に原告らが共有取得で構わないと述べたことから共有になったにもかかわらず、原告らは審判後半年もたたずに本件訴訟を提起したことを、権利濫用の一事情として主張する。しかし、上記1判示のとおりの経過で、本件不動産を売却して代金を分割する旨の本件合意が一旦はされ、その後に調停に代わる審判がされたことに照らすと、原告らが共有取得で構わないと述べたのは、共有状態で長期間を経過することまでも許容した趣旨とは認めがたく、共有状態とした後も売却や競売をして代金を分割する等の清算を視野に入れていたことが推認され、そのことは本件合意から被告らにも認識可能であったというべきである。そうすると、被告ら主張の事情は、権利濫用の一事情とは認められない。
また、被告らは、本件不動産に居住する被告Y2は、ほとんど収入がなく、家賃を支払って生活できない状態であり、本件不動産を退去して生活することができないこと、原告らの意図は、被告Y2を本件不動産から退去させるという嫌がらせにあることを、権利濫用の一事情として主張する。しかし、被告Y2も、一旦は本件合意をして、本件不動産を立ち退くことは受け入れたというべきである。また、平成18年○月○○日に亡Aの相続が開始した時点で、亡Aの共同相続人間での協議によっては亡Aの遺産である本件不動産に被告Y2が居住できなくなる可能性があることは被告Y2にも認識できたはずであり、既にその相続開始時点から10年以上が経過していることに照らすと、原告らの意図が嫌がらせにあるとは推認できないし、被告Y2にはその間に本件不動産に居住できなくなる場合の対処(収入状況に応じた居住地の選択等)を検討する時間は十分にあったというべきである。よって、被告ら主張の事情は、権利濫用の一事情とは認められない。」

熊本地裁平成22年10月26日判決(平成22年(ワ)558号)

「前記の本件紛争の経緯に照らせば、原告らと被告との間で、共有物の分割に関する協議が調わないことは明らかであるところ、その原因は、前記に判示したとおり、先ず具体的な分割を実行し、その後に残った親族関係の修復等の問題を協議したいとする原告らと、先ず親族関係の修復が保障される方途を確立すべきであり、具体的な分割の実行はその後になされるべきであるとする被告との間で妥協がなされないことにあると認められる。
そして、被告が主張する「真の親族関係の修復」の内容が曖昧で主観的なものといわざるを得ず、しかも被告においてこの点につき具体的な譲歩をする余地がないことが窺える本件において、原告らが、確定した遺産分割審判に応じた分割を実施するべく共有物分割の訴えを提起することが不相当であり、訴権の濫用に当たるものと判断すべき事情は見出せない。」

東京地裁平成17年6月29日判決(平成15年(ワ)21746号)

「1権利の濫用について被告は、本件請求について権利の濫用であるとして、(1)現在原告宅建物には、被告と長女が居住しており、生活の本拠となっていること、(2)被告は、平成5年ころから、精神疾患に罹患していること、(3)原告は88歳であり、被告は原告の唯一の相続人であること、(4)原告は、被告宅建物の2階部分及び本件土地の南側部分の土地を賃貸して収入を得ていることをその事情として主張するが、(1)及び(2)については、被告は原告宅建物に居住する前は、被告宅建物において、夫らとともに居住していたのであって、原告宅建物の持分を失うことが直ちに生活の本拠を失うことにならず、また分割それ自体が精神的重圧を伴うものとみることもできない。また(3)及び(4)についても、これらの事情から原告の請求が権利の濫用に当たるということもできない。したがって、被告の主張は理由がない。」

東京地裁平成16年7月21日判決(平成15年(ワ)22758号)

「被告が長年駐車場として本件土地を使用していた事実があるとしても、このような一部共有者のみの利益を伴う無償の使用関係の解消を求める共有物分割に関する本訴請求が、権利の濫用になるとは認められないから、被告の上記主張は採用することができない。」

東京地裁平成15年1月14日判決(平成12年(ワ)23489号)

「被告らは、本件共有物分割請求は権利の濫用であって許されない旨主張するので、検討する。
被告らは、本件1の土地を購入するよう勧められたところ、原告らに先を越された旨主張する。しかしながら、Bの相続人らと原告らあるいは被告らとの売買は、地主と借地権者との底地(借地権の設定された土地)の売買であるところ、本件1の土地は原告X2とAとが共同して賃借していたから、前記1(5)の原告らの売買契約に非難されるいわれはない。
次に、被告らは、○○番○○の土地上のA所有建物のうち共同住宅の居住者は、本件2の土地を使用しなければ公道に出ることができないところ、本件1の土地を分割すると、本件2の土地を使用することができなくなる旨主張する。しかしながら、共有物分割と使用は別問題であり、本件1の土地の分割によって、被告ら(共同住宅の居住者)において当然に本件2の土地を使用することができなくなるわけではない。また、○○番○○の土地は、南側の幅員4メートル余の道路に接しているのであって、袋地ではないから、建物の改造等により、共同住宅の居住者は、本件2の土地を通行しなくても、上記道路(民法210条にいう公路)に出ることができるものとうかがわれる。
ところで、Cは、原告らとの確認に反し、被告らを代弁して、前記1(7)の現状維持の使用協定書を作成しなければ、本件1の土地の分割をしないと主張するに至ったが、Aは、昭和49年○月○日から平成12年○月○日の前記各売買契約まで、本件3の土地を単独占有し(原告X2は事実上使用できない状況にあった。)、本件2の土地を原告X2と共同使用していたが、Aから原告X2に土地使用料が支払われことはないから、Aは、本件1の土地につき、賃料以上に使用していたといわなければならない。また、前記各売買契約後も、本件2の土地及び本件3の土地の占有使用状況は同様であり、被告らは、本件1の土地につき、取得した権利(持分100分の57)以上に使用しているというほかない。したがって、原告らが、被告らに対し、本件1の土地の分割を求めたり、本件2の土地の使用料の支払を求めたりしたとしても、不当とはいえない。
そうすると、本件共有物分割請求が権利の濫用であるとはいえず、その他に、これを認めるに足りる証拠はないから、被告らの上記主張は理由がない。」

山口地裁萩支平成元年10月20日判決(昭和62年(ワ)20号)

「被告の○○家の財産に対する貢献が認められるとしても、原告○○のそれと対比して格別とまでは言い難く、また本件分割が認められた場合、被告がその生活上、少なからざる影響をうけることは容易に推認されるものの、原告らにおいて単に被告の被ることがあるべき損害だけを意図して本件分割を請求している等特段の事情があれば格別、そのような事情が認められない以上、正当な権利行使というベきところ、本件にあっては、右の点につき主張がなく、またこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、被告の権利の濫用の主張は理由がない。」

大阪地裁昭和41年2月28日判決(昭和36年(ワ)295号)

「当時本件建物につき何らの権原ももたなかったこと当事者間に争いのない被告が増員する家族のため、原告の名において国分を立ち退かせるため支払った右立退料は、被告が本件建物に当時家族とともに居住するために当然支払わなければならなかったものであって、原告が被告のために国分を立ち退かせて本件建物に被告らを居住させなければならない義務はなかったのである。従って立退料支払いの事実は、原告の分割請求権の行使を権利の濫用たらしめる事情とはならない。」
「民法の共有は分割の自由を本質とするものであって、その制限は共有者間の不分割契約のときだけしかも5年をこえない期間だけに限って認めているところから考えて、被告の主張全部を合わせても、なお原告の本件建物の共有分割請求は、権利の社会性に反せず、権利の行使として是認できるものと言わざるを得ない。」

私道の分割を認めなかった事例

東京地裁平成19年1月25日判決(平成18年(ネ)84号)

「本件通路は、西側隣地のうちの○○の土地及び○○の土地から公道へ至る共用通路であるというべきである。そうであれば、そのような性格や効用が失われたといえるような特段の事情が認められない限り、そもそも共有物分割請求になじまないものというべく、そのような請求は権利の濫用として許されないというべきである。」

横浜地裁昭和62年6月19日判決(昭和61年(ワ)1789号)

「本件土地は原告、被告ら所有宅地の、その取得時及び現在における使用目的、すなわちそれぞれが各別の独立した住宅用土地として使用されているかぎりにおいて、原告、被告ら所有宅地にとって必要不可欠な土地であり、設定された目的の点においても、位置、形状の点においても各所有宅地に付属する関係にあるとみられる。そして、これは原告、被告らに共通するものであり、その共通する目的のもとに本件土地の共有関係が設定され、原告、被告らはこのような共通の目的によって、共通の目的が消滅しないかぎり、共有物の分割を予定しないものとして共有関係に入ったものと認められる。また、本件土地はその地積、形状(別紙図面(一)のとおりであることに当事者間に争いがない。)位置関係に照らし、原告、被告ら所有土地と切り離して独立した土地としては、利用価値、交換価値が著しく乏しく、これを共有持分に応じて分割することは一層これを乏しくするものと認められる。
このように、特定の、かつ共有者間に共通する目的のもとに土地の区画が設定されて共有関係が形成され、共有者間で共有物の分割が予定されていない共有物であって、その外形上もそのような関係にあることが明らかな共有物においては、民法257条、676条に準じ、その権利に内在する制約として、共有関係が設定された共同の目的、機能が失われない間は、他の共有者の意思に反して共有物の分割を求めることができないものと解するのが相当である。」

分割をしない旨の契約

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるのが原則ですが、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができます(民法256条1項)。
また、上記分割をしない旨の契約は更新することができますが、更新の時から5年を超えることはできません(同条2項)。
分割をしない旨の契約をしていると、その期間は、共有物分割請求訴訟を提起しても棄却されることになります。

東京地裁平成19年1月11日判決(平成18年(ワ)14095号)

「本件土地は、Aの死亡後、相続人らの遺産共有となり、家庭裁判所における調停を経て、原告及び被告らの共有となったものである。そして、原告と被告らの間に本件土地を分割しない旨の契約がされたとは認められないから、原告は、被告らに対して共有物の分割を請求することができる(民法256条1項)。
この点に関し、被告Y1は、本件土地の分割を請求することは本件調停における合意に反し許されない旨を主張する。しかし、本件調停は、その調停条項に照らし、本件土地を原告及び被告らの共有(遺産共有ではなく、通常の物権法上の共有)としたものであって、分割しない旨の合意を含むと解することはできないから、被告Y1の上記主張は失当というべきである。」

東京地裁平成16年7月29日判決(平成14年(ワ)27699号)

「2不分割の特約について被告の不分割の特約の主張は、その特約日(平成7年12月○日)から口頭弁論終結日(平成16年7月○日)までに5年が経過したことが明らかな主張であり、失当である。」

東京地裁平成3年10月25日判決(平成3年(ワ)906号)

「(1)本件において、本件合意に基づく共有物に関する債権は、本件土地を奥の駐車場への自動車の通路として使用させることを内容とするものであって、取りも直さず、本件土地について分割の禁止を求めるものにほかならない。したがって、本件において、民法258条1項(256条1項本文)の分割請求権と同法254条の共有物についての債権の承継との優劣が問題となる。
(2)共有者の内部関係の規律は、原則として共有者の意思に委ね、それに紛争が生じたときは、終局的には分割請求権を行使して、何時でも共有関係を解消できる(同法258条1項)。そして、この共有部分割の事由に対する例外として共有者は分割禁止の契約をする」とができる(同法256条1項ただし書)。しかし、その期間5五年を超えることはできず(同条1項ただし書)、また、この契約は、更新することができるが、その期間も更新の時から5年を超えることはできない(同条2項)。そして、この分割禁止の契約は、不動産については、その旨の登記をしなければ、共有者の特定承継人に対抗できない(不動産登記法39条の2)。このように、共有物分割禁止という物権的な合意が、基幹的に制限され、公示が要求されているにもかかわらず、分割禁止の契約と同様の効果を生ずる共有物についての債権的合意が、特定承継人に対して、公示することもなく、また期間の定めもなく永続的に対抗することができ、その結果、共有者が分割の請求をすることができないとすることは、分割請求権を認め、不分割契約に制限を設けた法の趣旨に反するものである。したがって、分割禁止の契約と同様の効果を生ずる共有物についての債権的合意は、不動産登記法所定の登記をして初めて、共有者の特定継承人に対抗でき、しかも、その登記をしても、その不分割の契約の期間は5年を超えることができないというべきである。
(3)そうだとすれば、前記のとおり分割禁止の契約と同様の効果を生ずる共有物についての本件合意は、不動産登記法所定の登記がされていないので、本件土地の共有者の特定承継人である原告に対抗できない。」

東京地裁平成14年10月3日判決(平成13年(ワ)16089号)

「民法256条1項により、原告には、本件土地の分割を求める権利があるところ、原告と被告との間において、本件土地を分割しない旨の合意(同条2項)がなされたという事実を認めるに足りる証拠はない。確かに、弁論の全趣旨によると、Aの遺産分割協議の際に、2階建物のための水道管が本件土地に埋設されていることなどを考慮して、被告のために本件土地の共有持分16228分の228が留保されたことが認められるが、遺産分割協議を早期に成立させるための暫定的な合意として遺産の一部を共有とすることは特段珍しいことではなく、それだけの事情で、以後分割しない旨の合意がなされたと認定することはできない。」

境界標

共有物の分割請求を認める民法256条は第229条に規定する共有物(境界線上の設けられた境界標、囲障、障壁、溝及び堀)には適用されません。こうした共有物の性質上当然のことであるとされています。

東京地裁平成17年10月11日判決(平成16年(ワ)10263号)

「被告は、本件土地は民法229条に定める境界線上に設けられた境界標、塀、溝渠など(相隣者の共有と推定されるもの)と同様に分割が禁止されるものであると主張するが、これら境界標等はその物自体だけでは通常ほとんど財産的価値がなく、分割することに合理的な理由と必要性がなく、むしろ共有とすることが双方にとって利益であると考えられるものであるから、注意的に民法256条の適用を排除する旨規定されているのであり、本件土地のように大きな財産的価値を有し共有者間で分割による経済的な利害得失が大きく異なるものについて民法257条の趣旨を適用ないし準用又は類推適用しなければならない合理的理由は見当たらない。」

競売により取得した共有者による分割請求

共有者の持分につき競売となり、競売で取得した者が、他の共有者に対して共有物分割請求を行う事例も散見されます(下記裁判例の他に東京地裁平成20年12月18日判決(平成20年(ワ)19380号)、東京地裁平成17年7月26日判決(平成17年(ワ)5784号)など)。
競売落札者による共有物分割請求が権利の濫用であると争われることがありますが、通常、これを権利の濫用としたのでは適切公正な競売手続を阻害することとなりかねないとされています。

東京地裁平成20年5月26日判決(平成19年(ワ)25699号)

「被告らは、原告の共有物分割請求は、それ自体が権利濫用であると主張する。確かに原告は、訴外Aが住居としている本件建物について、かかる事情を知りながら、その一部の共有持分だけを競落取得したものである。しかし、そもそも訴外Aの共有持分が競売されるに至ったのは、訴外A自身が、訴外株式会社Bに対して負っていた何らかの債務の支払を怠ったからにほかならない。一般に、債権回収の手段としての競売手続により、正当に対象不動産の所有権を取得した競落人が、これに居住している元所有者に対し、不動産の引渡を求めることはごく当然のことである。同様に、本件のような共有持分の競落人が、競落物件についての共有物分割を請求するのは当然のことであって、これを権利濫用としたのでは、原告が指摘するとおり、適切公正な競売手続を阻害することとなりかねない。とすれば、訴外Aが、脳梗塞による後遺症を負った身体障害者であることを考慮したとしても、なお原告の本訴請求を権利濫用と認めるには足りず、被告らの抗弁には理由がない。」

東京地裁平成18年12月21日判決(平成17年(ワ)4555号)

「共有物分割請求の権利濫用該当性)について被告は、原告が求める競売による共有物分割が行われると、被告は、本件建物からの退去を余儀なくされ、現状のようにA夫婦及び孫夫婦と共に生活をし、必要な世話を受けることが事実上不可能となる旨主張する。
しかしながら、もともと被告は、本件建物の持分を4分の1しか有しておらず、その子であるAの本件建物持分4分の3が競売により原告に取得されてしまった以上は、原告による共有物分割請求を拒むことはそもそも困難といわざるを得ない。しかも、本件においては、被告が本件建物から移動すること自体が困難である、あるいは本件建物でなければ介護を受けることができない特別の事情があることを認めるに足りる証拠はなく、被告及びAの真意が、住み慣れた本件建物で余生を過ごしたい、あるいは過ごさせたいというものであることは、○○○○からも明らかであり、さらに、被告の介護をしているとするA夫妻及びその子であるB家族が本件建物を使用していること自体、本来何の権原もないものというほかない。また、原告が競売により権利取得をした際の評価書によれば、本件建物の評価は3572万円とされているのであるから、被告が競売により取得することが予想される売得金は相当の金額に上り、当面、賃貸住宅や病院及び施設等で生活することが可能となる程度のものになると見込まれるうえ、A等による扶養や介護も期待することができる。
上記のような事情を総合勘案すれば、被告が前記○○のような状況にあること及び原告の経済力や物件取得時の認識等にかかわらず、原告の請求が、本件建物の共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、権利の濫用に当たると認めることは相当でないというべきである。」

東京地裁平成18年7月28日判決(平成18年(ワ)2105号)

「権利の濫用について(1)上記2で認定・判断したとおり、原告が、本件競売手続において、本件土地・建物の共有持分Bを取得したこと自体には、何ら非難されるべき点はないというべきである。
(2)また、被告は、病気により仕事ができず、年金収入(2か月で8万9000円)のみで生活しており、本件土地及び本件建物から追い出されたら、生活できないと主張する。
しかし、(1)所有権は単独所有が原則であり、共有物の分割請求は、民法によって認められている正当な権利であること、(2)被告が主張しているような事情があったとしても、それは社会福祉政策により解決すべき問題であり、被告の生活について何ら責任を負うべき立場にない原告の権利行使を制限する理由とはならないこと、(3)原告が請求している共有物分割請求が認められた場合には、被告にも、本件土地及び本件建物の売得金から競売手続費用を控除した金額の2分の1が支払われること、以上の事情を総合すれば、原告の本件共有物分割請求が権利の濫用に該当しないことは明らかであり、被告の主張は採用できない。」

この記事は弁護士が監修しています。

弁護士 井上元(いのうえもと) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(1988.4 登録、日弁連登録番号:20771)
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弁護士 中村友彦(なかむらともひこ) OSAKA ベーシック法律事務所

大阪弁護士会所属(2012.12 登録、日弁連登録番号:46674)
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